投資雑談

【Amazon日本クラウド事業に黄信号】受注した三井不動産と安藤ハザマによる大規模火災

投稿日:2018/8/11 更新日:

Amazonの日本でのクラウドビジネスに黄信号がともりました。

もちろん、黄信号は日本市場のみです。グローバル企業であるAmazonにとって、日本の停滞は大きな痛手ではありません。

むしろ、私たち米国株投資家にとって、その背景を理解することにより知識を深める絶好の機会ではないかと思えます。

それでは、いったい何が起こったのでしょうか。

目次

クラウド産業のデータセンター

多摩市の大規模火災

Amazonのクラウドビジネスに黄信号をともった原因は、2018年7月26日に東京都多摩市の建築現場での大規模火災です。火災は6時間後に消し止められました。しかし、これまでに5人の作業員が死亡し、50人が傷害を受けました。このうち約20人以上が意識不明の重体ということです。

まずは、犠牲になられた方のご冥福をお祈りしたいと思います。

その上で、火災の模様をYouTubeで見てみましょう。

データセンターの建物

地上3階のまったく窓のない異様な建物です。さらに地下は4階にもなっているのです。商業施設も最近は窓がありあません。しかし、商業施設はもっと洒落ている建物です。いったいこの建物は何を目的に建てられたのでしょうか。

日経新聞によれば、この建設はAmazonのクラウド事業であるAWSの新しいデータセンターということでした。

皆さんは、実際のデータセンターを見たことがあるでしょうか。

米国株投資家の方なら、AmazonのAWSやMicrosoftのAzureのようなクラウド部門についてはご存知と思われます。

機密事項であるデータセンターの建物

しかし、実際のデータが保管されているところをみたことのある方はほとんどいないのではないでしょうか。

それには理由があります。データセンターがどの建物であるかということは機密事項だからなのです。もしも、有事になった場合に、真っ先に攻撃大量となる建造物はデーターセンターです。さらに常にテロの標的にもなりえます。そのために、建物がデータセンターを世間に知られた時点で、データセンターとしては使えなくなるのです。

この多摩市の建築中の建物はデータセンターと報道されました。しかし、世間に知れ渡ったことから、もはやデータセンターとしての運営することは不可能です。さらに、5人が死亡した事故物件となったことから、商業施設やオフィスビルとしても使えなくなりました。

今回の火災で、読者の方も具体的にデータセンターというものがどのような建物であるかを認識することができたのではないでしょうか。

急拡大のクラウド市場

ここで、クラウド部門の市場について概観してみましょう。

現在、多くの企業が、データの保管について自社でサーバー管理するのではなく、IT企業にクラウドで管理を依頼する方向になっています。その市場拡大は凄まじく、2017年の1年間で51%も拡大しているのです。

世界シェアトップのAmazonのクラウド

その中でも、トップはAmazonのアマゾンウェブサービス(AWS)です。そのシェアは世界で33%という圧倒的なシェアがあるのです。

2番手はMicrosoftのAzureです。急激にシェアを伸ばしているもの、そのシェアは2018年初頭の時点でわずか13%でしかありません。

AmazonのAWSがいかに支持されているかが理解できると思われます。

しかし、その強さはシェアだけではありません。それ以上に優良な顧客を抱えているのです。アメリカのCIAもデータセンターをIBMからAmazonへ移行しています。日本では三菱UFJファイナンシャルグループも、データを自社管理から、AmazonのAWSへ移行しています。

現在もAmazonのクラウドへの受注は急激に増加しており、2018年第2四半期の決算では、49%の売上増がもたらされています。

Amazonは急拡大するクラウドの受注を処理するために、何年も前から今回のデーターセンターの計画を立てていたはずです。この多摩のデータセンターは今年2018年10月には竣工の予定でした。そのデータセンターの竣工が頓挫したのです。Amazonのとって痛手であることは疑いありません。

今後しばらくは、Amazonは日本でのAWSの受注能力が大きく制限されることは疑いありません、これを機会に日本のクラウド市場ではMicrosoftが攻勢を強めてくるかもしれません。

受注した三井不動産

日本最大の不動産企業

この建物の所有者は三井不動産です。三井不動産がAmazonからのデータセンターの発注により建設したのでしょう。

三井不動産は日本最大の不動産企業です。東京丸の内の大地主が三菱地所なら、東京日本橋の大地主は三井不動産です。日本橋に多数の巨大ビルを保有するとともに、ららぽーとや東京ミッドタウンのような商業施設を全国に展開しています。また、三井ガーデンホテルのようなホテルの全国展開に加え、帝国ホテルも傘下に収めているのです。さらに、日本最大のマンションディベロッパーでもあるのです。

しかし、国内の不動産業務を中心と記した企業であり、グローバル企業ではないためにIT関係とは全くかけ離れた企業であると思われています。

逆に、NTTやKDDIが同様の建物を建設した場合にはデータセンターと疑われるために、非常に危険です。

通常では三井不動産保有の建物がデータセンターとは思われません。だからこそ、データセンターの発注として非常に好都合だったのでしょう。

しかし、今回の大規模火災で、Amazonのデータセンター発注先が三井不動産であることが明らかになりました。

三井不動産の不祥事

日本企業の抱える問題点

今回の火災により、日本企業が抱える問題点の1つが明らかになったように思われます。

Amazonは、三井不動産が日本最大の不動産企業であることから、信頼して発注したのでしょう。しかし、最近の三井不動産がAmazonの要求水準を満たす企業かどうかは首をかしげざるえません。

それは最近の三井不動産は不祥事が続発しているのです。

マンションの基礎工事不良

昨年2017年に、三井不動産販売のマンション「パークシティLaLa横浜」が、基礎工事の施工不良のため傾いた騒動ありました。

発端は2014年11月、マンションの廊下の手すりのズレに住民が気づいたことでした。しかし、住民が三井不動産に相談しても、「東日本大震災の影響で問題はない」との回答のみでした。

その後に、マンションを支える杭が支持層に達していない基礎工事の不良や、施工データの改ざんが発覚したのでした。

さらに、マンション建設を委託された三井住友建設、さらに下請けの日立ハイテクノロジーズ、そして杭の施工を請け負った孫請けの旭化成建材という重層下請けの実態も明らかになったのでした。

そもそも、大幅にマージンを抜かれた状態で、孫請けがまともに人員を揃えることができないことは明らかです。しかし、納期に間に合わないなら莫大な違約金が課されることも少なくありません。手抜き工事が誘発されることは当然というほかありません。

多摩のデータセンターの火災

そして、今回2018年7月多摩データセンター竣工前の大規模火災です。

三井不動産は、今回の工事を安藤ハザマ建設に依頼しています。その安藤ハザマへの依頼にも疑問を感じないわけにはいきません。

多摩火災の原因である安藤ハザマによるウレタン引火

今回の火災は、安藤ハザマによるものです。それは、地下3階で可燃性の高いウレタンのそばで、バーナーで鉄骨を切断する際に出現したのです。そもそもウレタンのような可燃物の近くで火気を使用することは厳禁です。

しかし、安藤ハザマは同様の事故を1年前にも起こしているのです。

2017年の安藤ハザマによるウレタン引火による火災

昨年2017年6月に、食品大手「明治」の都内の物流センターの解体工事で4階建て倉庫約5000平方メートルが焼かれました。この火災で、20歳代の男性作業員が全身にやけどを負って病院に搬送されました。この事故もウレタンの近くでバーナーを使ったことによる火災です。

2年連続で同様の基本的なミスによる事故を起こしているのです。

安藤ハザマの工事で足場が崩れ通行人が死亡

安藤ハザマの不祥事はこれだけではありません。

2017年10月には、安藤ハザマ受注した、福岡市の病院建設現場で足場が倒壊し、通行人の男性(63)が死亡しています。

安藤ハザマの社員による詐欺

また、2015年の福島県田村市発注の除染事業で、水増し請求による詐欺で安藤ハザマの従業員が詐欺で有罪判決を受けています。宿泊費を水増しするなどした偽造の領収書や実績報告書を市に提出し、過剰に費用を請求したのです。

Amazonのような重要顧客の工事を不祥事続きの安藤ハザマに依頼することに疑問を感じないではいられません。

しかも、直近で、横浜のマンションが傾くという不祥事が起きたばかりなのです。

ドラッカーによる企業の目的『顧客の創造』

ドラッカーによれば企業の目的は『顧客の創造』です。この場合は、顧客であるマンション購入者や、Amazonに少しでも質の高い物件を提供することが『顧客の創造』につながるのです。

しかし、下請けや孫請け買い叩いてマージンを抜くようなことをすれば、下請けにも十分なペイが行き渡ることはできません。当然、十分な人材を確保することができず提供する物件の品質しわ寄せがくることは容易に想像できます。結局は、顧客の不利益につながるのです。

現在、三井不動産の決算は良好であり、良く経営は非常に順調です。しかし、同じ失敗をくり返すことは構造的な問題があると推測せざるえません。これからも同様の不祥事が続くなら現在の良好な経営状態は続くことはないかもしれません。

優秀な人材の扱い方

停滞する日本企業の問題点

このような不祥事は、他の日本企業でも続発しています。

それは、停滞している組織での、優秀な人材の扱い方を観察すれば理解できます。

そのことを理解するためにはまず、成長している組織で優秀な人材がどのように扱われるかを説明することがいいでしょう。

成長企業での優秀な人材

成長している組織は、優秀な人材にどんどん権限を委託していきます。その人材が失敗をしてもトップは責任を追求することはありません。責任を追求するのは、怠慢に対してのみです。

AmazonにおいてベゾスCEOなら、優秀な人材に権限を与え、たとえ失敗したとしても責任を追求することはないでしょう。失敗の原因をつきとめ、その反省点を生かして次の挑戦に望むはずです。そもそも、CEOのジェフ・ベゾス本人が誰よりも失敗の山を築いたことに誇りを持っているのです。それは失敗したということは、挑戦したことに他ならないからなのです。

停滞している企業での優秀な人材

逆に、停滞している組織では、別の現象が起こります。

優秀な人材がいる場合に、多数のそうでない人材は正々堂々と競争することはできません。競争しても太刀打ちできないからです。そのために根回し、裏工作で優秀な人材を陥れるのです。

そのような組織では、人材評価は減点法で、失敗をしないことが大切です。その結果、現状維持と根回しの「イエスマン」が出世していくのです。その「イエスマン」がトップにたった後は無能を隠すために、「ワンマン」になっていくのです。

そのような企業の典型が東芝かもしれません。他社との交渉よりも社内政治が優先され、社内のメンツが何よりも優先されたのでした。米原発企業ウエスチングハウス(WH)の買収が危険であることを察知していた担当者がいたかもしれません。しかし、東芝は社長自身が原子力部門出身で、買収を率先して進めていたのです。危険性を進言することは、社長のメンツを傷つけることにほかなりません。

社内政治が優先される組織的問題は、日本企業全般にいえるといっていいでしょう。それこそが、東芝やシャープの経営危機に陥った原因といっていいかもしれません。

しかし、その問題は日本企業に限りません。

20年前の世界最強企業GEの低迷も社内政治が原因かもしれません。GEのように多くの事業を展開するコングロマリットは、それぞれの部門の勢力争いが激しくなることが少なくありません。しかも、2001年に伝説的な経営者であるウェルチ氏が退いた後は、その争いが激しくなったことは容易に想像できます。

また、バルマー時代のMicrosoftも社内政治が跋扈したことから、優秀なITエンジニアが退職していました。

バリュー投資家が注視すべきこと

バリュー投資家は、伝統的な企業を好んで投資します。しかし、そのような企業には、歴史があるだけに、様々な派閥が形成され社内政治が幅をきかせていることが少なくありません。投資家は、投資先が社内政治から衰退していく兆候がないか注視することが必要でしょう。

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