前回の投稿で、ほとんどの金融エリートの運用するアクティブ運用が、インデックス運用に勝つことができないことを説明しました。それでは、なぜアクティブ運用は、小学生でも事務的に組めるようなインデックス運用に勝つことができないのでしょうか。
目次
理由1 高い信託報酬
アクティブ運用がインデックス運用に勝てない最も大きな理由の第1は、その信託報酬の高さにあります。
インデックスの代表であるバンガード社のETF(上場投資信託)であるVOOについては、信託報酬が0.04%になっています。一方、日本のアクティブファンドについては信託報酬が2%を超えることも珍しくありません。さらにその2%に消費税が追加され2.16%になります。インデックスファンドとアクティブファンドの信託報酬の差は2.12%にもなるのです。たった2.12%と思われるかもしれません。しかし、その2.12%の差は積もり積もると複利の効果で大変な差になってくるのです。
今回簡単な表で確認してみましょう。100万円をもとに運用を開始します。便宜的にインデックス運用もアクティブ運用も同じ5%の利回りとします。ただし、それぞれの信託報酬を引いて4.96%と2.84%に換算します。
4.96%は、インデックスの信託報酬0.04%を引いた値です。つまり4.96%はインデックス運用のモデルです。
2.84%は、アクティブファンドの信託報酬2.16%を引いた値です。つまり、2.84%はアクティブ運用のモデルです。
運用期間 | 4.96%の運用(円) | 2.84%の運用(円) |
0年 | 1,000,000 | 1,000,000 |
5年 | 1,273,852 | 1,150,298 |
10年 | 1,622,700 | 1,323,185 |
15年 | 2,067,080 | 1,522,057 |
20年 | 2,633,155 | 1,750,819 |
25年 | 3,354,251 | 2,013,964 |
30年 | 4,272,821 | 2,316,659 |
モデル | インデックス運用 | アクティブ運用 |
30年経過すれば、200万円近い差が出ることになるのです。
では、その差額はどこに流れているのでしょうか。言うまでもありません。猿のダーツにも勝てない金融エリートの高い給与に流れていくのです。そして、一握りの婚活に成功したVERY妻のリア充演出のために、タワマンや高級ブランドの浪費として使われるのです。
理由2 回転率の高さ
アクティブ運用のリターンの低くなる第2の理由は、回転率の高さです。
回転率が高くなるということは、売買が頻繁になるということを意味し、その都度手数料がかかることになります。更に、利益を出している銘柄を売却する場合は、キャピタルゲイン税もかかってきます。売買のたびにロスが出現するのです。
しかし、それだけではありません。チャールズ・シュワブ社が10万回の取引の調査をしました。結果は、売却した銘柄の方が、代わりに新たに買い入れた銘柄より1年後の利回りが3.4%も高かったのです。
では、どうしてそのような不利なデータがあるにも係わらす、アクティブファンドの回転率は高くなるのでしょうか。
3ヶ月ごとの成績評価
まず、運用担当者の多くが3ヶ月ごとに成績を判断されることにあります。
そもそも3ヶ月で判断の正しさを判断できるものではありません。しかし3ヶ月で判断され続ける場合には、短期的に値上がりをするような株買って一時的に成績を上げるようにするようになってきます。そのような勢いのある株を買ったとしてもそれが永久に続くはずはありません。そのようなことを避けるために3ヶ月ごとに銘柄を乗り換えていくことになるのです。
結局、短期での株式の乗り換えに過ぎなくなってしまうのです。
望まない資金の流入と流出
また、ファンドマネージャーの望まない資金の流入や流出があります。
もし伝説的なの運用担当者のアクティブファンドがあったとしても株価が急落して顧客の解約が殺到すれば、いく担当者が『絶好の買い場』と考えても問答無用で組み入れ資産を売却しなくてはいけません。
逆に株価が順調に上昇を続けて顧客の買い付けが殺到すれば運用担当者が『株価が高くなって、もはや上昇余地がない』と判断していても否応なく組み入れ資産を増やさなければなりません。
このように、運用担当者はたとえ能力があったとしてもその才能を発揮しずらい環境での運用を余儀なくされているのです。
ピーター・リンチのファンドでも損をする顧客
フィデリティ・マゼラン・ファンドで驚異的な利回りを実現したファンドマネージャーであるピーターリンチ氏。13年間で平均年間27%もリターンをあげています。100万円預けてれば、13年後2800万円になる成績です。
そのピーター・リンチの顧客ですら半分以上の顧客が損失を出しているのです。それは、値段が高くなったときに申し込み、調整での下落で耐えきれなくてすぐに解約したからです。
理由3 市場平均そのものがはアクティブ投資の結果
第3の理由は、市場平均そのものが、多くのアクティブ運用の結果だからです。
日々多くの投資家が、株式市場に参加しています。その最も多い投資家がアクティブ運用を行う機関投資家なのです。そのような機関投資家が企業分析や市況分析を行った上で、投資活動を遂行し、合理的な株価が形成されていきます。その結果がダウ平均や日経平均、S&P 500のような株価指数なのです。
したがって多くの機関投資家によって形成された平均である株価指数をすべてのアクティブファンドが超える事は理論的に不可能なのです。
さらに、アクティブファンドは、高い信託報酬や回転率の高さによる税金や手数料の増加等により費用がかさみます。
確率的にもアクティブ運用がインデックス運用を超える可能性は低くなるのです。
市場平均はニューヨーク・ヤンキースの平均打率
ニューヨーク・ヤンキース。日本の誇る天才スラッガー松井秀樹選手も在籍したことのある大リーグの名門中の名門です。当然、世界で最も優秀なバッターを抱えています。ではその天才ぞろいのバッターなら全員がチーム平均打率を超えることができるでしょうか。もちろん、できないことは明らかです。チーム平均打率は天才バッターである彼らが作り上げた値だからです。
市場平均も、ニューヨーク・ヤンキースのチーム平均打率とかわりありません。市場平均は、プロである機関投資家の作り上げた値です。全員が超えることは不可能です。
もちろん、違いもあります。一般人である私たちが、ヤンキースの平均打率を残すことができるはずもありません。ボールをバットにかすることすら不可能です。しかし、市場平均については一般人である私たちもインデックスファンドを購入することにより、簡単に到達できます。
インデックス投資の勧め
猿のダーツに勝てない金融エリート
『ウォール街のランダムウォーカー』で著名なマルキール博士。その博士は、猿にダーツが投げて決めた銘柄も、金融エリートが選択した銘柄も、大きなリターンの差は生じないと言っています。
実際に、ウォールストリートジャーナル主催のダーツ投げコンテストが主催されました。猿のかわりにダーツを投げることについてマルキール博士に依頼が来ました。冗談好きで茶目っ気のある博士は快くその依頼を承諾しました。そのコンテストで博士がダーツを投げて組んだポートフォリオは、その後ほとんどアクティブ運用よりも高いリターンをあげたのです。
インデックス投資を推奨するアクティブ投資の大家
伝説的なファンドマネージャーであるピーターリンチ氏ですら、引退後にバロンズ誌のインタビューで『一般投資家はインデックスに投資した方が賢明である。』と答えています。
バフェット氏も、自身の経営するパークシャー・ハサウェイの株主総会で『一般投資家はインデックスファンドを購入すべきであり、手数料の高いアクティブファンドに手を出すべきでない。』と繰り返し発言しています。
個人投資家の方針
世界的なアクティブ運用の大家がもはやインデックスファンドを推奨してるのです。あえてアクティブファンドに投資する必要はありません。
ただし、バリュー投資をはじめとする個別株への投資まで否定する必要はありません。半分をインデックスファンドに投資するなら、残りの資金で、自分なりに個別株投資のポートフォリオをつくっても悪くはありません。しかし、運用はあくまでもインデックスファンドを中心とすべきです。
実際に『敗者のゲーム』の著者チャールズ・エリス氏は、一部の資産を中国のグロース株に投資をしています。『ウォール街のランダムウォーカー』のマルキール博士も、一部の資産をバフェット氏の経営するパークシャー・ハサウェイ株に投資をしています。もちろん、チャールズ・エリス氏もマルキール博士も、インデックスファンドが資産の中核であることは言うまでもありません。
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