バリュー投資であろうとグロース投資であろうと、自分自身に合った投資スタイルを見つけることが重要です。しかし、いかなる投資スタイルであっても半分はインデックスファンドに投資をすべきです。インデックスファンドこそ長期投資の基本に他なりません。
参考)バフェットも推奨する『インデックス投資』
猿のダールに勝てない金融エリート『証券業異の不都合な真実』
なぜ金融のプロは猿に負けるのか『インデックス投資の勧め』
目次
バンガード社について
バンガード社の姿勢
インデックスファンドに投資をする際、多くの投資家はバンガード社を選択します。まさに、長期投資家のたしなみといっても過言ではありません。もちろん、バンガード社が、初めてインデックスファンドを世に出した企業ということもあるでしょう。しかし、それ以上に創業者ボーグル氏の個人投資家の利益を優先する姿勢が、深い信頼に繋がっているからなのです。
バンガード社によるインデックスファンド発売前、個人投資家は、まさに金融機関の餌食となっていました。
株式会社という制度の本来の目的
もともと株式会社の仕組みは、大衆から多くの資金を集めることで多額の資金を事業運営に投資をし、その見返りに出資者に利益を還元する制度です。当然株式会社が繁栄することによって、一般民衆も繁栄することになるはずでした。
しかし、繁栄したのは仲介者である金融機関だけだったのです。金融機関は個人投資家から資金を預かる際に、その仲介として高額な手数料を取り、さらに頻回に売買を勧め、また、高い信託報酬の投資信託を販売したのです。その結果、豊かになるのは金融機関ばかりだったのです。
バフェット氏の株式総会での寓話
2005年にバフェット氏はパークシャーの株主総会で、ロックウッド家の寓話を紹介しました。バンガード社の創立者であるボーグル氏は、自身の著作でそのロックウッド家について加筆修正し記載しています。その内容少し省略して提示してみましょう。
何世代にもわたり数千もの兄弟、姉妹、叔母、叔父、従兄弟を抱えるようになった裕福なファミリー、ゴットロックス家は、米国のすべての企業の株式を100パーセントを保有していた。彼らは毎年、数千におよぶ企業が生み出した利益成長と配当のすべての投資の報酬を手にした。
しかし、しばらくすると言葉巧みなブローカーが登場し、ゴットロックス家の従兄弟たちにほかの親戚たちよりも大きな分け前を獲得することができると説得した。一部の企業の株式をほかの家族に売却させ、その代わりに別の企業の株式を購入させたのである。ブローカーはこの取引を処理し、その対価として手数料を受け取った。
ゴットロックス家の財産が増えるペースが鈍化しはじめた。なぜだろうか?その理由は、いまやリターンの一部がブローカーによって食われているからである。
さらに悪いことに、これまでゴットロックス家は配当についてのみ税金を払っていればよかったのに、いまでは家族の一部が株式を何度も交換しあっているため、そこで 実現された売買益についても税金を払わなければならず、それが一家の財産全体を減少させているのだ。
従兄弟たちは、銘柄選択への進出が失敗であったことを認識し、自分たちで正しい銘柄を選択するよりも、上手な専門家の助けを借りて銘柄を選択すべきだと結論づけた。 そこで彼らは、より優位に立つために、銘柄選択の専門家であるファンドマネジャーを雇うことにした。ファンドマネジャーは、そのサービスに対して手数料を徴収した。そのため、ゴットロックス家が一年後に財産を評価するときには、持ち分がさらに減少したことを知ることになる。
ついに危機感をつのらせたゴットロックス家の面々は集まり、彼らの一部がほかの者 を出し抜こうとしたために発生した出来事を振り返った。「いったい、どうなっているのだろう?」彼らは嘆いた。
ここで、ファミリーきっての知恵者である老人が穏やかに応じた。「仲介者に支払ったお金と支払っている不要な税金のすべては、われわれ一家の利益と配当から直接支払われている。振り出しに戻るのだ、いますぐにブローカーを排除しなさい。すべてのファンドマネジャーを排除しなさい。そうすれば、われわれの家族は、アメリカ合衆国株式会社が毎年われわれのために生み出してくれる利益の100パーセントを再び手にすることができるだろう」
彼らは老人の賢明な助言に従い、アメリカ合衆国株式会社のすべての銘柄を保有するという、受動的だが生産的な当初の戦略に戻り、そのやり方を変えなかった。
『マネーと常識〜投資信託で勝ち残る道〜』ジョン・ボーグル著
インデックスファンドの普及はその長老の役目をするものです。
バンガード社の歩み
バンガード社創業
しかしながら、インデックスファンドの普及は、巨額の利益を上げていた金融機関と敵対することを意味します。財界と政界に深い繋がりを持つ金融機関との対決がいかに困難であったかは想像に難くありません。
1975年ボーグル氏が、もともと共同経営していた会社から独立しました。その独立を機に社名をバンガードと名付けました。そのバンガード社で、インデックスファンドの開発に乗り出します。
バンガードの名前の由来 ネルソン提督
バンガードとは、イギリス海軍ネルソン提督の帆船が由来です。ネルソン提督はナポレオンのイギリス上陸を阻止したイギリス救国の英雄として知られています。
1805年ヨーロッパ全土を支配下においたナポレオンは、イギリス本土侵攻のために、イギリスの2倍近い海軍力を整えます。
ナポレオンのイギリス本土上陸を許すなら、もはや地上戦でイギリス陸軍がナポレオン軍に勝つ術はありません。海戦での敗北はイギリスという国の消滅を意味するのです。
ネルソン提督は、戦力に劣るイギリス海軍を率いて、スペインのトラファルガー岬でフランス海軍と対峙します。名高いトラファルガーの海戦です。ネルソン提督はそこで、帆船を2列に並べ中央突破するという大胆不敵な作戦を遂行します。その作戦では、先頭を走る帆船は集中砲火を浴び、多くの乗組員が戦死します。
ネルソン提督は、危険を部下と分かち合うために、自ら先頭の帆船に乗船します。しかも、部下の制止を振り切りデッキの目立つ位置で、多くの勲章を胸につけ指揮を執ったのです。それは士気を高める反面、敵から狙い撃ちされる非常に危険なことだったのでした。
トラファルガーの海戦で、フランス海軍は全軍が大破か補足され、ナポレオンのイギリス上陸の野望は潰えました。しかも、イギリス海軍は一隻の損失も出さないという完勝だったのです。しかし、ネルソン提督は、フランス軍からの狙撃を受け戦死します。死に際してネルソン提督は戦勝の報告に喜び、部下に感謝の気持を伝えました。そして、『神に感謝する、私は義務を果たした』と言い残して息を引き取ったのでした。
ボーグル氏は、当時のネルソン提督のように、すべてをかけて金融機関から一般投資家に利益を取り戻す覚悟だったのです。
インデックスファンド販売の苦境
1975年12月31日に初めてのインデックスファンドが販売されました。しかも、販売手数料をノーロードといって無料化にしたのです。
しかし、インデックスファンドの販売は順調ではありませんでした。1976年の初の個人向けインデックス投信の販売当初、1億5000万ドルを見込んだものの、集まったのはその7%の1100万ドルに過ぎなかったのです。
バンガードの独立に際して、共同経営していた会社から顧客の資産の管理を引き継ぐことになっていました。顧客の資産の販売、運用はもとの会社に残っていました。
その管理を引き継いだ資産残高も80ヶ月連続で流出し、25億ドルから6億ドルと4分の1以下に減少したのです。
インデックスファンドの不理解
アクティブファンドでは、高い学歴を持つエリートコースを歩むファンドマネジャーが、証券会社の情報網から上昇する株を選別していきます。
しかし、そのエリートコースを歩むファンドマネジャーの90%近くは、小学生でも処理できる『市場平均』に勝つことができないのです。金融機関としては、そのような『不都合な真実』を一般の知られないように、プロの任せれば安心と宣伝していました。
そのために、「市場平均」を目指すインデックスファンドは、一般投資家にはほとんど理解されませんでした。
インデックスファンドの販売は「ボーグルの愚行」と冷笑されたのでした。
インデックスファンドが売れ始める
しかしやがて、7年間の月日がたち、ようやくインデックスファンドが売れるようになったのです。
まず、大学教授、弁護士、会計士のインテリ層が、マルキール博士の『ウォール街のランダムウォーカー』に納得してインデックスファンドを購入しはじめたのです。また、自分で運用して市場に勝てないことが身にしみてわったこともあるのかもしれません。
さらに、金融関係者インデックスファンド購入し始めます。金融関係者も市場平均に勝つことがいかに困難であるかを身にしみて理解していたのでしょう。
そして、年金運用機関もインデックスファンドを組み込みはじめたのです。
その後、インデックスファンドは次第に人気を呼び、ついに2000年にはバンガード社の資産運用残高が世界最大となっていきます。
バフェット氏による称賛
バフェット氏もバンガード社創設者のボーグル氏に対して、最大限の賞賛を送っています。
『ボーグル氏は当初、業界の笑いものだった。だが今日では、何百万の投資家に、他の投資手法よりはるかに優れたリターンと手数料の節約をもたらしたことで、満足しているだろう。彼は、それらの益を被った投資家たちと私にとっての恩人だ。』
ウォーレン・バフェット
バフェットは賞賛だけでなく、自身の遺産についてもインデックスファンドで運用することを指示しています。
投資家からの信頼
2016年には、ボーグル氏がインデックスファンドの販売を開始し40年が経過しました。現在、その運用資産は3兆ドルにものぼります。実に、世界のファンドの運用資産の40%にも及ぶ金額なのです。
モーニングスターのアナリスト、マイケル・ローソン氏は「バンガードは頂点に上り詰めた」と語っています。
しかし、バンガード社が頂点の登り詰めた理由は、長期にわたり、愚直に個人投資家の利益を追い求め続けたからに他なりません。だからこそ、個人投資家は、バンガード社なら裏切ることは無いと絶対的な信頼を寄せているのです。
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