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5Gにより成長を加速させるベライゾン(VZ)【米国最大の携帯キャリア】

投稿日:2019/4/20 更新日:

2008年のリーマンショックから景気拡大が続き、期間は10年を超えました。しかし、少しずつ景気後退の足音が近づきつつあります。

もちろん、将来を完全に予測することは不可能です。しかし、歴史的にみても格差が進み大半が貧困化した社会で、経済は停滞していくことは必然です。景気後退に備えることも必要と思われます。その選択肢の一つとして、永続性のある高配当企業への投資を挙げることができます。

アメリカ最大の携帯キャリアであるVerizon(VZ)は、そのもっとも有力な候補と考えて差し支えありません。

目次

ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)

沿革

ベライゾン(VZ)は、ベル電話会社を源流とします。

ベル電話会社は、電話の発明者であるグラハム・ベルによって1876年に発足した世界最初の電話会社です。その後、米国の電気通信業界を支配し、独占体制を敷いていきました。

しかし、1984年に独禁法の適応を受け、地域ベル電話会社7社に分割されます。

7社のなかで、東海岸を本拠地とする2社のベル・アトランティックとナイネックスが合併します。さらに、非ベル系でハワイなど小規模都市をカバーしていたGTE(General Telephone and Electronics)を買収し、ベライゾン(VZ)が誕生しました。2000年6月に合併が承認され、正式に発足します。

AT&T(T)も地域ベル電話会社が再統合することで再出発しています。

米国の通信事業はAT&Tとベライゾンの2強時代となっていきます。

概要

現在、ベライゾンは米国最大のワイヤレスサービス企業であり、約3億人の顧客を抱えています。 

事業内容はワイヤレスサービスに加えて、ブロードバンドおよびケーブルサービスも提供しています。 しかしながら、収益で約4分の3を占めるのがワイヤレスサービスです。 

成長戦略

低成長セクターの電気通信業界

現在、ワイヤレスサービスを含む電気通信業界は成熟に達し、すでに低成長セクターとなっています。

どのような戦略を描くかが今後の成長の鍵です。

メディア産業に主力すAT&T

ライバルであるAT&Tは、メディア企業としての成長を描いています。

その戦略に従いdirecTVや、タイムワーナーの買収を進めてきました。しかし、買収額は合計1500億ドル(16兆円)を超え、Tの財務状態の悪化を引き起こしています。

通信技術向上に主力するベライゾン(VZ)

一方、ベライゾンは、通信企業としての品質向上のフォーカスしています。

ネットメディアの買収

もちろん、ベライゾンはメディア戦略も進めています。

2015年にはAOLを44億ドルで買収し、2016年にはYahooの本体事業を48億3000万で買収しました。

AOLは、2000年のネットバブルの時期に、アメリカ最大のインターネット・プロバイダーとなった企業です。

Yahooもネットバブル時代のポータルサイトの旗手となっていた企業です。

しかし、AOLもYahooもかつての繁栄は見る影もありません。現在、デジタル広告市場を支配しているのは、Facebook、Google、およびAmazonの3社で、市場全体の80%以上を占めています。もはや、YahooやAOLは遙か後塵を拝し、追いつくことは困難な状態に陥っています。

2018年12月に、合計92億ドルの買収額のうち、46億ドルを減価償却費として計上しました。これはのれん代の96%にも及んでいます。

それでも、ベライゾンの買収額は、AT&Tが買収したdirecTVやタイムワーナーと比べると一桁少ないのです。そのために財務状態を悪化させるものではありません。

ワイヤレスサービスの買収

ベライゾンの投資は、電気通信サービスの品質向上により注力されています。

2009年、ベライゾンはAlltellを281億ドルで買収しました。Alltellは、非ベル系の米国電話企業で34州にわたり電話サービスを提供していました。買収により、ベライゾンの加入者数は20%増加し、国内最大のワイヤレスキャリアになりました。

ボーダフォンの持株譲渡

もともとベライゾンのワイヤレスサービス部門は、英ボーダフォンが45%出資する合弁企業でした。

2013年にベライゾンは、英ボーダフォンの持ち分45%全てを1300億ドルで買取り、ワイヤレス部門を完全子会社としました。

無制限データプラン

アメリカの無線キャリアでは、AT&Tとベライゾンによる2強体制が続いています。その2強の後に、スプリントとTモバイルがつけています。

2017年にそのTモバイルが、低価格で無制限の無線データプランを提供することで業界に価格競争を持ち込みました。

顧客を失ったベライゾンも、Tモバイルに匹敵する無制限データプラン提供することで対抗しました。

そのために、2017年には、ベライゾンの利益率が大幅に悪化します。しかし、2018年になると顧客数が増加に転じ、6%の売上増がもたらされました。しかも、解約率はわずか0.80%に留まっています。

現在、ベライゾンの無線ネットワークは最高レベルの品質と評価されています。市場調査会社RootMetricsによる評価では、ベライゾンが8年連続で第1位にランクされています。

loT(モノとインターネット)

確かに、4GではTモバイルのような低コストの競合企業がベライゾンの品質に追いつきつつあります。

しかし、IoT(モノとインターネット)と5Gの展開されれば、ベライゾンの優れた品質は、他企業の差別化をもたらすことができます。IoTと5Gこそ、これからのベライゾンが描く成長戦略に他ならないのです。どちらも成長分野であり、ベライゾンの中核となるワイヤレスおよびワイヤラインビジネスに、シナジー効果をもたらすものです。

IoT(モノのインターネット)とは、デバイスの外部への接続性を強化する新しいテクノロジです。 ベライゾンは、2016年Fleetmaticsの25億ドルの買収し、Telogisを9億ドルの買収をはじめ、IoT事業を強化するための複数の買収を行っています。 2018年、ベライゾンのIoTによる売上げは二桁増の成長を遂げています。

5G

さらに、ベライゾンにとって最も重要な成長部門は5Gです。 

ベライゾンが31億ドルでStraight Path Communications(STRP)を買収したことで、同社は全国的な5Gの展開に向けてより多くのスペクトルを得ることができるようになりました。

5Gの速度は現在の無線技術である4Gの100倍の速さが可能です。

今年2019年4月3日、ベライゾンはシカゴとミネアポリスで5Gの超広帯域サービスの開始を発表しました。

現在、5Gに対応できるスマートフォンはSamsung GalaxyS10に限られています。しかし、ベライゾンの5G開始とともに、4月18日にAppleとクアルコムは訴訟を取り下げ和解に至りました。iPhoneの5G参入が本格的に開始します。

実際に5Gが利益を生み出すのは2021年以降ということがベストバーグCEOの見解です。その後市場は急激に拡大し、2035年までに5Gの総市場機会は12.3兆ドルと推定されています。

5Gが引き起こす破壊的イノベーションの可能性

私見では、その予想を遙かに超える需要が起こるのではないかと考えています。

2001年の3Gで、日本製の携帯電話が画期的な進化を遂げ、NTTドコモはiモードを開発しました。

しかし、4Gでは、スマホ時代が幕をあけることになりました。

5Gが本格化することで、新たな破壊的イノベーションが出現し、ハイテク業界企業の勢力図が変わるかもしれません。

5G時代によって、モバイルによる人工知能やブロックチェーンが本格化する土壌が整うからです。

ファイナンス

売上高

まず、10年の売上高、キャッシュフロー、利益のクラフを添付してみます。

2015年にピークを迎え低迷していた売上高は、2018年に鮮明に回復しています。それは、携帯キャリアの顧客増とともに、loT(モノとインターネット)の拡大が寄与しています。

キャッシュフロー

2016年と2017年では、設備投資や買収によりフリーキャッシュフローの低下がみられました。しかし、2018年には、鮮明なフリーキャッシュフロー回復を認めています。設備投資が、利益に還元されつつあると時期に到達したのです。

配当

2018年の配当性向は54.3%であり、平均10年平均配当率の70.7%を大きく下回っています。現在、配当は極めて安全と言っていいでしょう。

不況耐性と永続性

不況に強いビジネスモデル

ベライゾンのビジネスモデルの利点は、それが不況に強いということです。だからこそ、電気通信産業はディフェンシブ銘柄と考えられています。リーマンショック時の1株あたりの利益をみてみましょう。

2007年の1株当たり利益は2.34ドル
2008年の1株当たり利益は2.54ドル
2009年の1株当たり利益は2.40ドル

リーマンショック時でも利益はほとんどかわりません。この一貫した収益性により、安定した配当が可能となっています。

現代社会で、電気通信は不可欠のインフラとなっています。それは景気後退期でもかわることはありません。そのためにベライゾンは大不況の間も利益を上げ続けることができるのです。

永続性

電気通信産業は、不況時での安定性に加え、栄枯盛衰が極めて少ないことも知られています。それは、莫大な設備投資がかかることから、参入障壁が極めて高いからです。

結論

10年間続いた好景気も終わりにさしかかりつつあります。

不況時に、経済成長が制限されるときには、確実に配当を提供している企業を見つけることが、有用です。 経済成長がなくとも、配当によりさらに多くの株式を追加できるからです。

2018年にベライゾンが業績回復を遂げ、健全なレベルのフリーキャッシュフローを生み出しています。 

さらに、loT(モノとインターネット)と5Gによる成長が見込まれます。

景気後退期の準備として、配当を目的とする投資スタイルを検討する場合に、極めて魅力的な企業といって差し支えありません。

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