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20年間のハイテク企業の栄枯盛衰【ハイテク企業に投資するには】

投稿日:2018/4/18 更新日:

 

現在、第四次産業革命とも言われています。人口知能、ブロックチェーン等の新たなIT技術は、世の中を劇的に変えることはもはや疑いがありません。

目次

巨大IT企業

来たるべき第四次産業革命の覇権を握るため、巨大IT企業は、莫大な利益を惜しみなく研究開発費に投入しています。そのため、もはや新興企業が出現する余地はありえない。現在の覇者であるAmazon、Google等の企業が永久に市場を支配する。そのように多くの投資家やアナリストが考えるようになってきています。すなわち、『今回は違う』と。

しかし、バーゲンハンターとして著名な投資家テンプルトンはこのような格言を残しているのです。

もっとも高くつくものは『今回は違う』である。

ジョン・テンプルトン

20年前のハイテク市場

実証の必要性

社会の現象を判断するためには、机上の空論ではなく実証が必要です。実証のためには過去の事実を求めることが必要です。

20年前の1998年との比較

20年前のIT市場を現在と比較することで、検証してみましょう。

20年前の1998年、Windows95でOSを支配したMicrosoftがIT業界の覇権を握っていました。Windowsのシェアは97%にも及んでいたのです。当時はAndroidやiPhoneもありません。スマートフォンもタブレットも存在しなかったのです。ネット閲覧には、Windows以外の選択肢はなかったのです。

倒産寸前のApple社

残りの3%のシェアはApple社のMacintoshでした。しかし、Apple社は死の階段を降る渦中だったのです。

前年の1997年7月7日、Apple社は経営危機から、創業者のスティーブ・ジョブズに復帰を要請しました。しかし、復帰したジョブズが見たものは予想を超える惨状でした。会社の資金は従業員3ヶ月分の給与を下回り、さらにWindowsとの競争に敗れたMacintoshのPCは売れば売るほど赤字だったのです。

誰の目にも倒産は時間の問題でした。

ニューエコノミーの旗手Netscapeの敗北

インターネットを閲覧するプラウザは、現在Safariや、Internet Explorer、Chromeが使われています。

ブラウザを最初に商品化したのはNetscape社でした。Netscape社は1995年8月9日にニューヨークで上場されます。その日こそニューエコノミーが始まった日に他ならないのです。1996年のビジネス誌での記事を引用してみましょう。

「1つのソフトウェア会社が市場と独占している状況は、恐ろしいことではないだろうか。それに次ぐ企業はあまりに出遅れていて、哀れとしか言いようがない。「業界標準」を作るという名目をふりかざして、自社が独占するテクノロジーをもとに、次々と新製品を出している先頭走者に、いったい他の会社が追いつくチャンスなどあるのだろうか。」

USニューズ&ワールド・リポート

Microsoft社のことではありません。Netscape社のことを指しています。当時はすでにWindow95が発売されていました。その時ですらNetscape社はそれほどまでに大きな影響力を持っていたのです。

その後、Microsoft社がWindowsにInternet Explorerを無料でハンドルすることで、Netscape社は敗北し消失しました。

Yahoo SONY 東芝

ポータルサイトでは、米ヤフーが日の出の勢いでありニューエコノミーの旗手と持てはやされていました。

SONYは、薄型PCのバイオをヒットさせ一躍PCのトップ企業となります。音楽でもMDを発売し世間を驚かせました。Walkmanから続く音楽デパイスのリーダーの足場をより強固にしたのです。

また東芝はノートPCのシェア世界一を誇っていました。

誰にも相手にされない検索エンジン

前年の1997年にスタンフォード大学の2人の学生が画期的な検索エンジンを作成しました。彼らはその検索エンジンの売却先を探したものの興味をしめす企業はありません。米Yahooに検索エンジンを1億円で売却することを提案するも断れるのです。検索エンジンの売却を諦め、学業に復帰することをスタンフォードの経営学の教授と相談することとしたのでした。

しかし、彼らは、学業に復帰せず、Googleを創業することになります。

20年前に確実だったこと

栄枯盛衰の激しいIT業界で、当時確実視されたことは2点のみでした。

まず第1は、今後100年はMicrosoftの一極支配が続くことに疑問の余地はありませんでした。問題はどこまでその支配が及び巨大化するかといういことでした。

第2は、かつて脚光を浴びたApple社が消滅することでした。問題はどのように終焉を迎えるか。どのように精算するのかでした。

米国のビジネススクールでも、ケーススタディでAppleが取り上げられ、どうして一世を風靡した競争に敗れ、消滅することになるのか。また、消滅する場合にどのようにすべきなのかがディベートのテーマとして扱われました。もしも、そこでMicrosoftを超える方法もありうるなど発言しようなら、現実の把握というビジネスの適性を疑われたことは疑いありません。

現在のハイテク市場

2018年の時価総額

20年後の2018年。

時価総額1位にはApple社が「世界で最も成功を収めたテクノロジー企業」として君臨しています。20年前の1998年に倒産しかあえりえなかったはずのApple社に、たった12年後の2010年にMicrosoft社は盟主の座を明け渡すことになったのです。

時価総額2位はGoogleです。20年前に作成した検索エンジンの売却先を見つけることができなかった2人はみずから起業の決心を固め、ベンチャー企業としてGoogleを立ち上げたのです。Microsoftは、1998年の時点でベンチャーだった企業にも、わずか14年後の2012年に抜かれることになったのです。

3位には、Microsoftがつけています。Microsoftはいったん時代に取り残させるかと思われたものの、現CEOナデラの舵取りにより、Windows、Word等のシェアを生かし、企業やビジネスマンへのITサービス企業へと変貌していきました。

Yahoo SONY 東芝

しかし、ポータルサイトの王者であった米Yahoo!は解体しました。

SONYはPCから撤退しMDの製造も中止となりました。王者walkmanはApple社のiPodとiPhoneにその位置を奪われることになったのです。

ノートPC世界シェアトップであった東芝は存続すら怪しまれる状態となっています。

iPhone

市場を変えたiPhone

この20年間でハイテクの状況を一変させたのは、iPhoneです。

iPhoneは、2007年6月29日にアメリカで販売が開始され、Apple社を「世界で最も成功を収めたテクノロジー企業」の地位に押し上げることになります。

しかし、 そのiPhoneの成功は、ITの専門家ですら予測をすることは困難だったのです。事実、多数の競合他社、パートナー企業、アナリストがiPhoneの成功を疑っていたのでした。その一部を紹介します。

Microsoft CEO スティーブ・バルマー氏の見解

「iPhoneがそこそこの市場シェアを獲得する可能性はゼロだ。あり得ない。色んな割引きで安くなっても500ドル(約5万円)もする電話だって。キーボードが搭載されていないので、ビジネス用途には向かないマシンだろうね。」

Microsoft CEO スティーブ・バルマー氏

電子手帳のOSでもトップを走っていたMicrosoftは、その後モバイルへの移行に遅れることになりました。現在windows phoneを見かけることすら困難です。

BlackBerry社CEOジム・バルシリー氏の見解

「BlackBerryにとって大きな潮の変わり目などいうのは、言い過ぎだと思う」

BlackBerry社CEOジム・バルシリー氏

かつてアメリカでビジネスマンを中心に高い人気を誇り、オバマ元大統領も愛用していたスマートフォンであるBlackBerry。しかし、その大きな潮の変わり目を前に、BlackBerry社は2016年9月28日にスマートフォンの製造から撤退を表明しました。

Verizon社CEOデニー・ストリングル氏の見解

「iPhoneは、弊社が提携先第一号にならなくてよいと思う製品だ」

Verizon社CEOデニー・ストリングル氏

iPhone発売初期は、米国ではAT&TがiPhoneを独占販売権を獲得しました。AT&Tは、iPhone人気を原動力として、アメリカの携帯キャリアトップであるVerizonとの差を縮めていくのです。

VerizonがiPhoneの取り扱いを開始するのは、2011年にようやくiPhone 4が発売されたときでした。

ドラッカーの著作から

これからやってくる大きな変化を見抜くことは、簡単ではありません。専門家でも予測することが困難なのです。そのヒントを経営学の創始者ドラッカーの著作から引用してみましょう。

「ベンチャーが成功するものは、多くの場合、予想もしなかった市場で、予想もしなかった顧客が、予想もしなかった製品やサービスを、予想もしなかったも目的のために買ってくれるときである」

『イノベーションと起業家精神』

ベンチャーであっても大企業であっても、新分野を開拓には起業家精神が不可欠です。その起業家精神により切り開かれたブルーオーシャンではiPhoneのように予想外の製品が覇者となっていくのです。

ハイテク市場への投資

ハイテク市場の性質

ITではその中ではダイナミックな栄枯盛衰が常に行われています。だからこそ、次世代の覇権となる企業の初期段階で投資すれば大きな利益をえることができます。しかしながら、1社が勝ち他のすべてば負ける業界です。更にその永久に市場を支配するようにみえる企業も、次世代のイノベーションをおこす企業によって、過去の企業となり、あるいは消滅していくのです。

もちろん、初期段階で次の覇権企業を峻別できれば大きな利益を得ることができることは明らかです。それがグロース投資です。しかし、ドラッカーの言うように、新しい市場は予想もしない市場で、予想もしない顧客により形成されるのです。初期段階でどの企業が覇権を握るかの判断は極めて困難です。更に、繁栄を謳歌した企業が覇権を失い暗礁に乗り上げる前に、撤退する時期を見極めることも困難です。ハイテク企業への個別投資は、天才以外には、推奨されるものではありません。

ハイテク市場への投資方法

社会科学である以上、実証が必要でありその根拠は過去に求められます。その過去では20年の間に大きな栄枯盛衰が起こっています。しかし、IT業界そのものは市場は劇的に拡大しています。

大きな栄枯盛衰が起こっている以上、ハイテクの個別企業は消滅しうるという最悪の状態を前提とすべきです。その上で、第四次産業革命による市場拡大の利益を享受するためには、個別企業のリスクを緩和できるETFへの投資がもっともリスクの少ない手段です。そのETFの中でも、新興企業を多く抱えるNASDAQ市場の指数をなぞったインデックスETFであるQQQへの投資を推奨されます。

もちろん、ハイテク投資は必須ではありません。投資しないという選択肢も考慮してもいいでしょう。しかし、その場合も米国市場をほぼ網羅するインデックスへの投資は必要です。そのインデックスの中にハイテク企業は含まれているのです。インデックスに投資をすれば、間接的にハイテク企業へ投資をしていることになるのです。

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