個人投資家は最も脆弱な投資家です。そのために、安全に安全を重ねて投資をしていくことが大切です。その安全性を重視する投資方法の1つがバリュー投資でした。その中でも永続性のある企業に投資することがもっともリスクの低い投資方法です。
その永続する企業を永久に保有する投資方法が、バフェット型のバリュー投資です。そのような永続的に競争優位を保つことのできる企業に長期投資をし、永久に株式市場の留まることで複利の利益を享受することができるのです。事実、バフェットはその投資スタイルによりアメリカで第3位の8兆円を超える莫大な資産を築きました。
目次
シーゲル博士の『時に裏打ちされた黄金銘柄』
名著『株式投資の未来』
バフェットのバリュー投資は学術的にはジェレミー・シーゲル博士によっても研究されています。その成果が名著『株式投資の未来』に記されています。
ジェレミー・シーゲル博士は、2004年にインデックス投資の優位性を支持する『株式投資』を出版しています。もともとはインデックス投資を支持する学者でした。
しかし、2005年に「インデックスファンドよりももっとローリスクでハイリターンの運用方法がみつかった」と述べました。その内容を記したのが『株式投資の未来』です。そこには、時代の流れを生き抜いた『時に裏打ちされた』老舗企業への投資が、高いリターンを投資家にもたらしたことが説明されています。
『時に裏打ちされた黄金銘柄』の驚くべきリターン
アメリカの市場平均の指標であるS&P500はダウ平均と並んでもっとも使用されている指標の1つです。そのS&P500では定期的に銘柄の入替がおこなわれています。シーゲル博士は、1957年から2004年時点までS&P500の銘柄として存続した銘柄を算出しました。その数は125社でした。その生き残り125社の老舗企業をリターン順に並べたところ、『時に裏打ちされた黄金銘柄』と言うべき驚くべき結果が出てきたのです。
順位 | 企業名 | ティッカー | リターン(%) | |
1 | フィリップモリス | PM | 19.75 | 世界最大のタバコ多国籍企業 |
2 | アボットラボラトリーズ | ABT | 16.51 | グローバル医療製品メーカー |
3 | ブリストルマイヤーズ | BMY | 16.36 | 世界最大級の製薬会社 |
4 | Tootsie Roll | 16.11 | お菓子メーカー | |
5 | ファイザー | PFE | 16.03 | 世界最大の製薬会社 |
6 | コカコーラ | KO | 16.02 | 世界最大の清涼飲料水メーカー |
7 | メルク | MRK | 15.90 | アメリカ第2位の製薬会社 |
8 | ペプシコ | PEP | 15.54 | コカコーラのライバル企業 スナック菓子販売世界1位 |
9 | コルゲートパーモリーブ | CL | 15.22 | 歯磨き粉世界シェア40%を超える世界的日用品メーカー |
10 | Carne | 産業機器 |
わかりやすいように、生活必需品企業は黄色で、ヘルスケア企業は黄緑色の背景にしています。
何と1位から9位までが生活必需品企業とヘルスケア企業を占めていたのです。
まず、生活必需品企業から見てみましょう。
1位のフィリップモリスは、看板ブランド『マールボロ』を擁する世界最大級のタバコ会社です。
6位のコカコーラは、改めて説明の必要はないでしょう。
8位はコカコーラのライバルであるペプシコです。ペプシコーラをはじめとする清涼飲料水の大手企業です。世界最大のスナック菓子メーカーでもあります。
9位のコルゲートパーモリーブは、世界で歯磨き粉40%以上のシェアを持つ家庭用品メーカーです。
次にヘルスケア企業を見てみましょう。
2位のアボットラボラトリーは、1888年創業の世界的なグローバル医療製品メーカーです。
3位のブリストルマイヤーズ、5位のファイザー、7位のメルクは、どれもが世界最大級の製薬会社であり、100年超える歴史を持っています。ファイザーについては、2016年には世界売上高1位の製薬会社となっています。
まさに、著名な投資家であるバフェットの『消費者独占企業』を彷彿とさせる企業です。
逆に、ハイリターンの企業のなかには、ハイテク銘柄は1つも見つけることはできなかったのです。それは、ハイテクは市場を制覇した企業が、その後、次世代の技術を持つ企業にとってかわられ、常に覇権の入れ替わる業界であり永続性が極めて低いためと考えられます。
シーゲル博士の研究は、目まぐるしく変化する世の中で、時代を超えてもかわらないで人々から必要とされる企業こそが、高いリターンを生んでいることを如実に示しています。その時代を超えても変わらない領域こそが、生活必需品であり、ヘルスケアなのです。
文明発祥期から変わらないこと
人類三大発明『火の使用』『農耕・牧畜』『文字』
少し話を変えて、人類の三大発明が何かを考えてみましょう。様々な意見があると思います。私自身は『火の使用』『農耕・牧畜』『文字』と考えます。
『言葉』が入るべきではという意見もあるかもしれません。しかし『言葉』については、イルカやチンパンジーも簡単な言葉があることがわかってきました。そのために『言葉』は人類だけの発明とはいいきれません。今回は『言葉』については除外します。
では『火の使用』から見てみましょう。火を使いこなすことによって、人類は猛獣から身を守ることができるようになり、また、冬の寒さをしのぐことができるようになりました。『火の使用』により人類は、絶滅から免れたといっていいでしょう。事実、私たちホモ・サピエンス以外のすべてのヒト科は、あるものは猛獣の餌食となり、またあるものは飢餓や疫病によりすべて絶滅しています。
また、食材に火を通すことで炭水化物やたんばく質等の消化吸収を助けるとともに、食材からの病原体の感染を防ぐこともできるようにもなりました。『火の使用』は、生活必需費である食材の利用効率を高め、また疫病から守るというヘルスケアの機能にも資することになったのです。
その後『農耕・牧畜』の発明により、人類の狩猟生活は終わりを告げます。『農耕・牧畜』により、生産力が飛躍的に拡大し、人々が集まる都市が形成され、国家が誕生したのです。それが、メソポタミア文明や黄河文明等の四大文明の発祥です。すでにメソポタミア文明の遺跡から、パン、ビスケット、ビール、ワインの生産が証明されています。それら『農耕・牧畜』からの加工品であるビスケットやビール等の価値は、人類の文明発祥から現在に至るまで、変わらないで続いているのです。
また、薬草の調合についても文明発祥期からその痕跡を認めることができます。ヘルスケアも、人類の歴史と軌を一にするのです。
その文明の記録は『文字』として記録され、世代超えて伝承されるとともに周辺地域へも伝播することなっていきます。
文明発祥期から変遷を繰り返すテクノロジーの世界
逆にテクノロジーは、歴史的に見ても、石器、青銅器、鉄器と栄枯盛衰を繰り返しています。それはまさしく、現在のハイテク市場が、常に覇者が入れ替わる栄枯盛衰の激しい業界であることとかわりありません。ハイテク個別株の長期リターンがかならずしも高くないのは、栄枯盛衰が激しく、常に覇者が入れ替わっていることがリターンを下げているものと考えることができます。その入れ替わりは、文明発祥の時点から続いているのです。
個人投資家が個別株に投資をするにあたって
複利は1年では大きな利益をもたらしません。しかし、長期間を経ることで、その複利は莫大な利益を生み出していきます。それは永続性を前提とします。時代の変化にもかかわらず人々に必要とされるものこそ永続性を有するのです。文明発祥時から、人々に絶え間なく必要とされる領域こそが生活必需品とヘルスケアなのです。個人投資家が個別株に投資する場合には、『時に裏打ちされた黄金銘柄』である生活必需品企業とヘルスケア企業を中心にポートフォリオを構成することがもっともリスクを減らし、長期のリターンをあげるものとと考えます。
ただし、個別株投資については、無理に行う必要はありません。シーゲル博士も投資額の半分はインデックスに投資することを推奨しています。個別株に投資することに不安があるなら、インデックス投資のみでも不都合はありません。
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