税金 質問の回答

【質問の回答】海外口座の配当課税について

投稿日:2019/2/24 更新日:

 

今回、WNさんから海外口座での配当課税についての質問あったので記事にしました。

まず、以前記載した記事のリンクを添付します。

『上場株も未公開株の扱い』海外口座の税金 その1

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『譲渡損失の特例控除が使えない』海外口座の税金 その3

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今回、質問内容は難しいかもしれません。難しいと思う読者は、質問内容は飛ばして、『税金について疑問のある場合』から読んでも差し支えありません。

WNさんからの質問

まず、質問内容を引用します。ただ、難しいので質問は飛ばしてもいいでしょう。

何度も読み、参考にさせていただいています。

以下の条文を見ると、外国金融商品市場において売買されている株式等を「上場株等」として扱うことは十分に明記・定義されており、日米租税条約上の有価証券市場の公認を根拠に解釈する必要はないように思いました。(国家間の租税条約を根拠とするのであれば「平成30年分株式等の譲渡所得等のあらまし」P.46の「上場株式等」の範囲として、「⑥外国金融商品市場において売買されている株式等」をそもそも列挙できないはず。)
・上場株等の定義に「一 株式等で金融商品取引所に上場されているものその他これに類するものとして政令で定めるもの(以下略)」とあります(租税特別措置法37-11-2)。
・上記上場株等の定義後半部分「その他これに類するものとして政令で定めるもの」の内容は、「2 法第三十七条の十一第二項第一号に規定する政令で定めるものは、株式等(同項に規定する株式等をいう。以下この項において同じ。)のうち次に掲げるものとする。(中略)二 金融商品取引法第二条第八項第三号ロに規定する外国金融商品市場において売買されている株式等」とされています(租税特別措置法施行令の25-9-2)。
・上記「外国金融商品市場」の定義は「外国金融商品市場(取引所金融商品市場に類似する市場で外国に所在するものをいう。以下同じ。)」です(金融商品取引法第二条第八項第三号ロ)。

上記条文の範囲では、金融商品取引業者を通じた取引であることは「上場株等」の条件となっていないようでしたが、外国金融商品市場において売買されている株式等を、金融商品取引業者を通じた取引(正規ルート)でないことを理由に「上場株等」から除外し、未公開株として扱うことの条文的な裏付けがあれば教えていただけませんか?この点については、条文等ではなく、税務署員の回答とそれに合わせたご自身の解釈を根拠とされているということになるでしょうか?

素人なりに自分でも調べてみましたが、それらしい条文にはたどりつけませんでした。また、金融商品取引業者を通じて取引することを「上場株等」の前提とすると仮定した場合、上場株式等の譲渡損失の取扱い(租税特別措置法の第三十七条の十二の二の2)のところで、損益通算(配当)および損失繰越の特例の適用条件として、金融商品取引業者を通じた譲渡に限定する文言があることに矛盾を感じます。
「平成30年分株式等の譲渡所得等のあらまし」でも、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の対象となる譲渡は、金融商品取引業者等を通じた譲渡と強調して説明がされており(P.52)、「上場株等」の譲渡には、金融商品取引業者等を通じた譲渡とそうでないものがあることが前提であるように読めます。

つまり結論としては、真逆になってしまいますが、外国金融商品市場において売買されている株式等の取引は上場株等として扱うことが前提で、配当の分離申告も選択できるし、国内口座の上場株式等の譲渡損益との通算も可能。ただし、海外口座で出た上場株等の譲渡損失については金融商品取引業者を通じた譲渡にあたらないため(租税特別措置法の第三十七条の十二の二の2)、配当との損益通算と損失繰り越しの特例の適用は受けられないデメリットがある、となるように思います。見たところこれで条文間の矛盾や破たんもなさそうですから、この他に特段参照すべき特記規程等がないのであれば、条文通りに素直に上場株等として処理すべきであり、政府の気持ちを忖度する必要もなさそうです。しかし、税務署や税務署員の解釈や裁量で取扱いが変わるような内容でもないため、実際複数の税務署員が未公開株として扱うと回答し、分離課税処理に対し追徴まで発生しているという点が気になります。ちなみに、こちらにたどり着く前(条文にもあたる前)に一度国税庁相談センターに電話したところ、海外口座の上場株式は一般株として扱うよう回答を頂いたため、その根拠を求めた所、10分以上保留にされた後、上場株等扱いであったと訂正されたため、一般株扱いとする根拠は得られませんでした。私自身は現在非居住者で、日本の税制について専門家に相談を行う予定がたたないこともあり、記事のアプローチや切り口に共感したこちらで疑問に思った点ご質問させていただいた次第です。よろしくお願いします。

以上が質問内容です。少し難しいかもしれません。

税金について疑問がある場合

国税庁にもない税法解釈の最終決定権

現時点では、海外口座の配当課税で分離課税が可能かどうかについて、確定的な結論はありません。それは、税理士会にも国税庁にも最終判断する権限はないからです。

最終決定権は誰が握っているのでしょうか。根拠となる条文を引用します。

日本国憲法 第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

最終的な法解釈を確立できる機関は最高裁判所以外にないのです。

実質的に税法解釈を決定する管轄税務署

しかし、海外口座の配当課税で最高裁判例が確立することはないでしょう。

最高裁が判例を定立するためには、第一審、控訴審、上告審を経なくてはいけません。裁判には莫大な費用と時間がかかります。

しかも、行政訴訟で個人が勝訴する可能性はほとんどありません。投資家としては、税務署の指示通りの税金を払った上で、今後の方針を検討した方が合理的です。

もちろん、個人が国税庁に勝訴する場合もあります。それは、著しい人権侵害から救済する場合です。

具体的には、平成27年の外れ馬券が経費算入できるかの判例が該当します。もしも、被告人は外れ馬券が経費にならないなら、生涯かけても支払えない税金を負うことになるのです。

逆に言えば、著しい人権侵害でない場合に、個人の意見が採用されることは皆無といっていいでしょう。海外口座で資産運用をするほど金融資産のある投資家に、配当の分離課税が認められないからといっても生涯にわたり背負いきれない税金を負うような人権侵害に至ることはありません。結論としては税務署の意見が通ることになります。しかも、税務調査を行うのはもよりの税務署の担当者です。最寄りの税務署に聞くことがもっとも大切です。

税務調査の向けての対策

国税庁に直接聞くことができるなら、それがベストかもしれません。しかし、国税局は相談窓口を置いていません。最寄りの税務署に相談するようにホームページに記載されています。

なお、都内の場合の相談窓口は、税理士事務所に委託している場合も少なくありません。税務署の職員なら疑問点を国税局本庁に確認できるものの、一般の税理事務所の場合は、税務署ににらまれることを恐れ、問い合わせることが躊躇することもあります。

どうすればいいでしょうか。

その対策としては、相談内容の電話録音するとともに、担当者の氏名をノートの記載し、記録を残すことが重要です。そうすれば税務調査になっても、『今回は仕方ないですね。』となると思われます。

海外口座の配当課税についての回答

その上で、海外口座の配当課税が総合課税となる法解釈の説明に移ります。条文解釈なので難しいと思う読者は、最後の『結論』を読むだけでも大丈夫です。

今回の記載も総合課税しか認められないとの立場です。

なお、日米租税条約を根拠とすべきかどうかについては、その議論で結論が変わることはないので割愛します。

海外証券業者と個人投資家との取引禁止

まず、海外証券業者が国内の個人投資家と取引することが禁じされていることについて説明します。

金融商品取引法では、第一種金融商品取引業でなければ、証券取引所での売買を媒介する業務を行うことはできません。その第一種金融商品取引業の登録には、内閣総理大臣の許可が必要なのです(金融商品取引法第二十九条)。もちろん、その許可は、外国の業者でも取得可能です。

その上で、許可されていない外国証券業者(金融商品取引法第五十八条)は、国内にある者を相手方として上場株の売買のような証券業務を行つてはならないと記載されています(金融商品取引法第五十八条の二 本文)。

もちろん例外もあります。有価証券関連業を行う者を相手方とする場合には認められています(金融商品取引法第五十八条の二 ただし書)

参考のために条文を引用します。

金融商品取引法

第五十八条 この節において「外国証券業者」とは、金融商品取引業者及び銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関以外の者で、外国の法令に準拠し、外国において有価証券関連業を行う者をいう。

第五十八条の二 外国証券業者は、国内にある者を相手方として第二十八条第八項各号に掲げる行為を行つてはならない。ただし、金融商品取引業者のうち、有価証券関連業を行う者を相手方とする場合(当該外国証券業者がその店頭デリバティブ取引等の業務の用に供する電子情報処理組織を使用して特定店頭デリバティブ取引又はその媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)若しくは代理を行う場合を除く。)その他政令で定める場合は、この限りでない。

SBI証券は、米国株の委託を米国籍のインタラクティブ・ブローカーズ証券に委託しています。

SBI証券のような金融業者の場合には、インタラクティブ・ブローカーズ証券のような海外証券業者との取引が認められているのです。

もちろん、米国のインタラクティブ・ブローカーズ証券は、海外証券業者であり、国内の個人投資家を相手とする業務は法律上では認められていないのです。

認められていない取引である以上、分離課税の恩恵を受けることはできなず、租税特別措置法はできないと解釈することが妥当と思われます。

租税特別措置法の解釈

金融証券取引法を受けて、租税特別措置法でも『上場株での、譲渡損失の配当利益からの控除と、譲渡損失繰り越し』について、個人と金融業者で分けて記載されています。

まず、個人投資家の場合です。

一 第一種金融商品取引業者への売委託により行う上場株式等の譲渡
二 第一種金融商品取引業者に対する上場株式等の譲渡

次は、金融機関の場合です。

九 信託会社の営業所に信託されている上場株式等の譲渡で、当該営業所を通じて外国証券業者への売委託により行うもの
十 信託会社の営業所に信託されている上場株式等の譲渡で、当該営業所を通じて外国証券業者に対して行うもの

信託会社には証券会社や銀行も含まれます。

第一種金融商品取引業者ではない外国証券業者と取引できるのは、信託会社のような金融業者のみです。そのために、国内の個人投資家との取引を前提とした記載はありません。

譲渡所得については、取引の主体を明確にするために詳細な記載となっているのです。そこか配当課税との違いです。配当所得と比較するためではありません。

配当所得と譲渡所得の対比を前提としない租税特別措置法

投資家は、インカムゲインかキャピタルゲインかとういように配当収入と譲渡所得との対比して考えがちです。

しかし、租税特別措置法には、そのような前提で成立しているわけではありません。

理由は目次にあります。まず、目次を引用します。重要な箇所は太字にします。

租税特別措置法 目次

第一章 総則(第一条一第二条の二)

第二章 所得税法の特例

第一節 利子所得及び配当所得(第三条一第九条の九)

第二節 不動産所得及び事業所得

第一款 特別税額控除及び減価償却の特例(第十条第十九条)
第二款 準備金(第二十条一第二十一条)
第三款 鉱業所得の課税の特例(第二十二条一第二十四条)
  第四款 農業所得の課税の特例(第二十四条の二一第二十五条)
  第五款 その他の特例(第二十五条の二一第二十八条の四)

第三節 給与所得及び退職所得(第二十九条一第二十九条の四)

第四節 山林所得及び譲渡所得等

第一款 山林所得の課税の特例(第三十条・第三十条の二)
第二款 長期譲渡所得の課税の特例(第三十一条一第三十一条の四)
第三款 短期譲渡所得の課税の特例(第三十二条)
第四款 収用等の場合の譲渡所得の特別控除等(第三十三条一第三十三条の六)
第五款 特定事業の用地買収等の場合の譲渡所得の特別控除(第三十四条一第三十四条の三)
第六款 居住用財産の譲渡所得の特別控除(第三十五条)
第六款の二 特定の土地等の長期譲渡所得の特別控除(第三十五条の二)
第七款 譲渡所得の特別控除額の特例(第三十六条)
第七款の二 居住用財産の買換えの場合等の長期譲渡所得の課税の特例(第三十六条の二一第三十六条の五)」
第八款 特定の事業用資産の買換えの場合等の譲渡所得の課税の特例(第三十七条-第三十七条の九)
第九款 有価証券の譲渡による所得の課税の特例等(第三十七条の十一第三十八条)
第十款 その他の特例(第三十九条一第四十条の三の二)

有価証券の配当課税と譲渡課税について太字にしています。

第二章の第一節が配当所得についてです。
第二章の第四節の第九款になってようやく有価証券の譲渡所得です。

目次の位置関係からも対比する意図がないことは明からです。しかも、その間には、不動産所得、給与所得、山林の譲渡所得、住宅の譲渡所得があるのです。

譲渡イコール売買ではないことについて

その上で、配当課税に比べ、譲渡課税の記載が細かい理由は、第一款の山林の譲渡を読むことで、さらに理解できると思われます。

山林譲渡で最初の項では、譲渡の中でも売買について記載されています。次の項では、山林の相続、遺贈、贈与について記載されています。

もう理解できたと思われます。

株取引を行う場合に譲渡というと売買しか思い浮かばないかもしれません。

しかし、法律上、譲渡は売買に限りません。遺贈や贈与も譲渡の一つなのです。そのため、譲渡の場合には、売買や贈与ごとに分けて記載する必要があるのです。配当所得よりも複雑な記載になることは明らかです。

しかも、配当の場合は、権利者の変更はありません。他方、譲渡は権利者が変動します。その変動に伴い複雑な法律関係が形成されるのです。

譲渡所得が詳細な記載になっているのは、法律上必要性があるからなのです。

結論

もちろん、私の記載した法解釈を最高裁が採用するとは限りません。そもそも、法解釈は最高裁の裁量によってどちらにでもなるのです。さらに最高裁は、法律そのものを憲法違反として無効とすることもできるのです。

決め手は、社会的な必要性です。

民主主義社会では、多数はが優位となり、弱者が足蹴にされる危険性があります。裁判所の最大の目的はその弱者を保護することです。

現在、二極化が激しくなっています。その二極化した社会で海外口座での取引を行っているのは富裕層といっていいでしょう。富裕層からより高く税金を取ろうと国税庁が考えた場合に、それを阻止する理由は、裁判所にはありません。

条文を細かく解釈するだけでなく、裁判所に流れる力学が何かを考えることも大切と思われます。

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