ファイザー製薬(PFE)は、ダウ平均30社の一角を構成する米国最大の製薬会社です。2018年には世界で1位の売上高を誇っています。
さらに、シーゲル博士の『株式投資の未来』では、黄金銘柄のなかで6位のリターンを出しているのです。
そのエクレセント企業も、最近10年間は停滞を余儀なくされていました。しかし、その巨人が目を覚ましつつあるのです。
目次
ファイザー製薬(PFE)の沿革
設立
ファイザー製薬(PFE)という偉大な企業の歩みを簡単に振り返りましょう。
1849年にドイツ移民であるチャールズ・ファイザー氏とチャールズ・エアハルト氏によってニューヨークで設立されました。
1860年代の南北戦争では、北軍の医薬品の大半を請け負うほどの急成長を遂げます。
抗生剤の大量生産と開発
1928年に細菌学者フレミングにより世界最初の抗生物質であるペニシリンが発見されました。
ファイザー(PFE)は、ペニシリンの大量生産に成功し、第二次世界大戦でのペニシリン需要の殆どを担うことになります。
1950年には抗生物質のテトラサイクリンを開発に成功しました。テトラサイクリンは、ペニシリンでは効かないクラミジアやマイクプラズマに効果を発揮する抗生剤です。
現在、ファイザー(PFE)は米国最大の製薬会社であり、時価総額は2256億ドルにも達しています。
ファイザー製薬(PFE)の概要
事業内容
PFEの事業内容を確認していましょう。以下の3つのセグメントに分かれています。
イノベーテイブ・ヘルス(売上高の56%)
エッセンシャル・ヘルス(37%)
コンシューマー・ヘルス(7%)
イノベーテイブ・ヘルス
イノベーティブ・ヘルスは新薬の製造販売を行うセグメントであり、売上高の56%と最大規模を占めています。
腫瘍疾患、炎症免疫疾患、内科疾患そして希少疾患を対象とする新薬の他、ワクチン製造も含まれているのです。ポートフォリオは極めて多様性に富んでいます。
神経痛薬『リリカ』(2018年売上高の8.6%)、乳がん治療薬『インブラス』(7.7%)、心房細動での血栓予防薬『エリキュース』(6.4%)が相当します。
参考)『エリキュース』がいかに画期的かはBMYの紹介記事で記載しています。興味があれば読んでいただければと思います。
バイオ薬では、リウマチ薬『エンブレル』(3.9%)が相当します。JNJのレミケードやABBVのヒュミラと同じ抗TNFα阻害剤のバイオ製剤です。
参考)ヒュミラについては、ABBVの紹介記事と、バイオ薬の参入障壁(その1、その2)で以前紹介しています。
最近は、リウマチのバイオ薬『ゼルヤンツ』(3.3%)も売上を伸ばしています。レミケードやヒュミラとは異なる機序の製剤です。
小児の肺炎球菌予防ワクチン(10.6%)もイノベーテイブ・ヘルスに含まれています。
エッセンシャル・ヘルス
エッセンシャル・ヘルスは、特許切れの医薬品薬をメインとし、総売上高の37%を占めています。
コレステロール薬リピトール(売上高の3.6%を占める)、高血圧薬ノルバスク(売上高の1.8%)のように、特許権を失ったPFEのレガシー薬を扱っているのです。
さらに、バイオシミラー薬もこのセグメントに含まれています。
コンシューマー・ヘルス
コンシューマー・ヘルスは、ファイザーで最小のセグメントであり、総売上高の7%を占めています。栄養補助食品、パーソナルケア製品や、処方箋なしで薬局で購入できる医薬品が含まれます。
昨年2018年12月に、ファイザーは、英グラクソ・スミスクライン(GSK)との合弁で、コンシューマヘルスケア会社を設立しました。一般用医薬品の販売では売上高が世界第1位となる規模です。今後、一般用医薬品の市場は、急激に拡大することが予想されています。
新薬パイプライン
米国最大の製薬業界である巨人ファイザー(PFE)も、1990年台のバイアグラ、リピトール以降は特記すべき新薬がなく、停滞を余儀なくされていました。
しかし、現在、その停滞から脱却しつつあります。
PFEのパイプラインに関して、今後5年間で25件程度の製品承認を受けることが進められています。そのうち15件が大ヒットとなる可能性があると考えているのです。
さらに、4つの主要なバイオシミラー薬も承認を控えています。
しかも、2025年までに大きな特許切れとなる新薬は『リリカ』のみです。
巨人は眠りから覚め、復活の糸口をつかんだといって差し支えありません。
買収戦略
復活に至るパイプラインの多くは買収により手に入れたものです。
ファイザー(PFE)の将来の成長は、買収によって大きく依存しています。最近10年間の主な買収について見てみましょう。
ワイス買収
2009年1月、PFEは世界9位の製薬会社ワイスを買収しました。買収総額は680億ドル(約6兆円)にも達しました。
ワイスは、関節リウマチのバイオ製剤『エンブレル』、乳幼児向け肺炎球菌ワクチン『プレベナー』など、バイオ医薬品とワクチンに強みを持っていました。
ワイス買収により、ファイザーは売上高世界一位の製薬会社となりました。
ホスピーラ買収
2015年には、ホスピーラを180億ドル(約2兆円)で買収します。
ホスピーラは、世界屈指のバイオシミラー企業です。買収によりPFEは、バイオシミラーを成長エンジンとする足場を確実なものとしました。
メディデーション買収
2016年にはバイオ企業メディデーションを140億ドル(約1.4兆円)で買収しました。仏サノフィと買収合戦を繰り広げた上での獲得でした。
メディデーションは前立腺がん治療薬『イクスタンジ』を保有しています。また、乳がん治療薬『インブラス』も、その買収から手に入れりことになりました。
ファイナンス
売上高
売上高、キャッシュフロー、純利益の推移をグラフで見てみましょう。
2012年と2013年で売上高の急激な低下が見られます。リピトールの特許切れによるものです。PFEは、その後、停滞に陥ることになりました。
キャッシュフロー
しかし、それでも力強いキャッシュフローが維持されています。そのキャッシュフローが復活の鍵となっていたのです。
あらゆる業界でもっとも高い参入障壁を築いているのは、製薬会社といっても過言ではありません。新薬の開発に莫大な経費がかかるからです。
しかし、新薬の開発に成功したとしても、その後の認可までには長期間を要します。開発から市場へ出すには10年近い歳月を要することもあるのです。それまでは売上げに貢献することはありません。
製薬会社は承認まで耐える体力が必要です。その体力こそが強力なキャッシュフローに他なりません。
最近では、ベンチャーのバイオ企業が画期的な新薬を開発することも少なくありません。しかし、開発に成功しても、小さいプレイヤーはこのようなキャッシュフローがありません。開発の段階で、すべての体力を使い果たしているのです。とても承認までの治験に耐えることはできないのです。
結局、新薬開発に成功したベンチャーのバイオ企業のほとんどは、PFEのようなメガファーマに買収される他ありません。
配当
PFEは、2009年に配当を50%カットしました。ワイス買収に伴う債務増加のためです。
ワイス買収により、PFEは世界一の製薬会社となりました。しかし、その巨額債務のために50%の減配を余儀なくされたのです。
その後、2010年以降から緩やかながら増配を続けています。そのまま配当が増えるなら、2020年には、連増増配は10年に至ることとなります。しかも、その増配率は7%にもなります。
現在の配当性向は、50%程度です。
現時点で、配当は非常に安全と判断できます。
結論
ファイザーは150年以上の時間の波風をしのいできた企業であり、3.5%以上の配当利回りのある優良株です。
しかも、最近での停滞を脱して、製薬業界の巨人が目を覚まそうとしているのです。
これから2025年までに多くの新薬が承認されることが見込まれます。逆に、特許切れとなるのは『リリカ』のみです。
今後、景気後退でPFEのような優良株も暴落になることもあるかもしれません。しかし、2025年までは、鬼ホールド・配当再投資は極めて安全と考えて差し支えありません。
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