以前4回にわたり、ハイテク株式市場の死角の記事を記載しました。そこでは、1929年の大暴落とその後の大恐慌をについて記述しました。1回目の記事を添付してみましょう。
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目次
【良好なファンダメンタルズとPER15のバリュエーションで崩壊した株式市場】ハイテク株式市場の死角 その1
最近の株式市場は、ハイテク企業が支配していると言っても過言ではありません。 人工知能や、ブロックチェーン、量子コンピュータ等の新しい技術を開発するハイテク企業は、これからも世界経済を牽引していくことは ...
1929年の大暴落を取り上げた理由は単に過去を知るためではありません。それは現在のハイテク企業の興隆が1929年のような壊滅的な株式市場の崩壊を引き超すリスクが高いと考えているからです。今回は、その過程を詳しく説明していきましょう。
ハイテク株の高騰
ドイツのGDPを超えるFAAMGの時価総額
現在の株式市場を牽引しているセクターはハイテクセクターであることの異論はありません。
特に、FAAMGの5銘柄の時価総額はドイツのGDPをも上回るのです。FAAMGとは、Facebook、Amazon、Apple、Microsoft、Googleの頭文字をとった略語です。
高収益のハイテク企業
そのようなFAAMGを中心としたハイテクセクターの高騰から、2000年前後のITバブルの二の舞を危惧する声も少なくありません。しかし、現在のハイテクセクターの株高はITバブルの時代とは決定的に異なります。それは、莫大な利益に裏付けられた株高に他ならないからです。しかも、一部のハイテク企業の成長率は20%を超えているのです。
しかし、そのようなハイテク企業の高成長は、従来の産業を破壊することによりもたらされたものなのです。それでは、どこのセクターの産業が破壊されているのでしょうか。そのセクターを確認することで、これからの社会の変遷を理解することができるのです。
ハイテクがもたらす社会の変化
小売りセクターの激変
まずは、小売セクターです。
その震源地がAmazonであることは誰の目にも明らかです。
Amazonは、書籍のネット販売からはじまり、家電、洋服、家具等のあらゆる分野に手を広げています。そして、Amazonの興隆により、かつて繁栄をほこった大型ショッピングモールは、衰退の一途をたどり、現在、アメリカ中に廃墟モールの残骸が放置されているのです。
既存のメディア産業の衰退
メディア産業も衰退の一途をたどりつつあるセクターです。
かつて、メディア産業の中心であるテレビと新聞は絶大な影響力を誇り、第四の権力とも言われていたのです。その影響力は宣伝媒体としても強力に作用し、莫大な収益を上げていたのでした。
しかし、インターネットの発達によりまず新聞が勢いを失ってきました。
さらにネット送信技術の発達により、インターネットでも動画が見れるようになってきました。その結果、YouTubeのようなインターネット動画の普及は、テレビの視聴率を直撃することになったのです。
もはや、広告産業は、テレビや新聞から、インターネット広告に覇権が移ったと言っても過言ではありません。そのネット広告の利益のほとんどは、FacebookとGoogleの収益に帰するのです。
既存のメディアが音おたてて崩壊しつつあるのです。
消滅した昭和の風景
小売りやメディアは、日常生活できわめて身近なセクターです。昭和時代には、茶の間にテレビがあり、日曜日には家族で百貨店に言ってお買い物をする風景が日常でした。その風景が、ハイテクの興隆による一変したのです。Amazonによるeコマースで買い物を行い、メディアについてはiPadでポータルサイトやYouTubeを視る時代となったのです。
ハイテクが破壊するもっとも重要なセクター
もっとも重要なセクターとは
もっとも、小売りやメディアの衰退は単なる栄枯盛衰と言っていいかもしれません。そもそも世の中は移っていくものなのです。しかし、ハイテクにより破壊されているセクターはそれだけではないのです。社会でもっと重要なセクターが破壊されているのです。
そのセクターとは雇用です。
eコマースによる雇用喪失
Amazonにより小売が、店舗からeコマースへと移行をしています。その移行でもっとも大切な事は雇用の喪失です。同じ販売量であったとしてもeコマースでは店舗にくらべ従業員数が4分の1で済むのです。Amazonの効率的な生産性の裏で確実に雇用が減り続けているのです。
事務職の激減
事務職の求人も激減しています。
現在、日本では空前の売り手市場となっています。しかし、その売り手市場であっても、求人が圧倒的に少ないのが一般事務職です。それは、企業で人の手を介してきた社内手続きや入力などの単純作業をソフトウエアによる自動化を導入しているためです。その結果、職場から多くの一般事務の仕事が消え始めているのです。
ホワイトカラーの雇用崩壊
しかし、今後は単純な事務労働だけではなく、専門性の高い頭脳労働の求人も減少することが予想されています。それは多くの頭脳労働を人工知能が担うことになるからです。そのようにソフトウエアのよる自動化や人口知能の普及は、ホワイトカラーの雇用を奪い、経済の中核であった中産階級が崩壊することになっていくのです。
保険会社の雇用激減
高給であった金融機関をみてみましょう。銀行や保険会社では特に人工知能が活躍できる余地が大きいのです。
すでに保険会社の窓口では人工知能が顧客との会話を分析して適切な答えを出すようなシステムが構築されています。コールセンターにおいても人工知能が顧客との対話分析して最適な回答探し出すようなオペレーションシステムが導入されています。
銀行の雇用激減
銀行でも与信や融資の判断が人工知能に依存しつつあるのです。銀行はクレジットカードの個人決済データを保有しています。そのデータから予測モデルを解析して資源回収の確率を計算し、融資を決定しているのです。その方法により。従来よりもはるかに効率的に判断することができるようになっているのです。
これは銀行員や保険会社の高い給与の終焉することになります。
証券業界での雇用喪失
証券会社や投資銀行でも例外ではありません。
世界最大の投資銀行であるゴールドマン・サックスでも花形であったトレーダーのリストラが急激に進んでいます。
2000年のゴールドマン・サックスのニューヨーク本社では600人ものトレーダーが大口顧客の注文に応じて株式を売買していました。しかし、2017年現在、ゴールドマン・サックスの本社に残っているトレーダーはわずか2人です。従来の人間のトレーダーにかわり、200人のコンピューターエンジニアによる『自動株取引プログラム』が運用をいなっているのです。
ウォール街から人間のトレーダーがいなくなる日が近づきつつあります。
人工知能による雇用激減の試算
このように事務労働だけでなく、頭脳労働の多くも人工知能に置き換わっていくのです。
野村総合研究所とックスフォード大学による共同研究では、現在の労働者の49%が人口知能に置き換わるとの試算があるのです。これは、経済の中核を握っていた高給ホワイトカラーが没落することを意味します。
現在、日本の労働人口は6000万人でです。しかし、人口知能の発達により労働人口は3000人に激減するとになると予想されいるのです。
しかも、現在の中流以上の収入を確保される人口は1000万人に過ぎません。それは、人工知能では対応できない職種の従事することが出来るからです。
それ以外は、人口知能よりも安いコストで働くことで初めて雇用されることになる労働者です。その場合の年収は100万円にようやく到達する程度とも試算されています。
失業率増加による社会の破綻
21世紀の情報産業による自動化そして人工知能は、コストを抑えることによる効率化を押し進めていくことになります。
しかし、それは雇用を破壊していくことになり、世界的な失業から生活苦に陥る人々が増加の一途をたどって格差が進んでいくのです。その結果、経済の中心をになってた中産階級は空洞化していき、世界の購買力が低下していくことになるのです。
1929年に起きた大恐慌ですらアメリカでの失業率は25%に過ぎません。ハイテク企業の興隆は、その時の失業率を遙かに凌駕する40%を超える失業率を引き起こし、社会を引き裂くような混乱を引き起こしうるのです。
40%を超える失業率に至った社会の末路
40%を超える失業率がどのような社会が想像できるでしょうか。実際にそのようになった社会をあげてみましょう。
大恐慌でアメリカの失業率は25%でした。しかし、大恐慌の影響は世界中に及びました。その中でもっとも大きな影響を受けた国はドイツです。大恐慌によりアメリカからドイツへの投資は一斉に引き上げられることになりました。その結果、経営危機に陥る銀行が続出し、多くの企業が倒産することになったのです。ドイツは深刻な不況に陥り、失業率は1932年には44.4%に達したのでした。
そのような絶望的な不況の中で、ドイツ人は彗星のように現れた若き政治家に未来を託すことになります。その力強い演説で人々を魅了した政治家こそあのアドルフ・ヒトラーなのです。
中産階級崩壊後でのハイテク投資
中産階級崩壊後のハイテク企業の収益
話を政治から経済にもどしましょう。
中産階級の購買力が減るなら、広告を出しても付加価値のある商品が売れなくなります。広告に費用をかけても売上げに結びつかなくなるのです。それは、Googleの利益を直撃することでしょう。
Amazonも利幅の高い商品が売れなくなります。利幅のある商品が売れないことでeコマースの利益は激減します。
経済の大規模な縮小によりクレジットカードの決済額も大幅に減少し壊滅的な打撃を受けることになります。
ほとんどの人々は、生きていくことがやっとになります。生きていくためのライフラインを担っている企業が見直されることになるのです。その企業のセクターとは、食料、医療、電気ガス等に他なりません。
私のハイテク企業への投資方針
そのような状態に至れば、グロース投資家は、成長が止まったハイテク株を見捨てることになるでしょう。個人的には、そのときこそハイテク株を大量に購入する時期と考えます。
次の覇権を握るハイテク企業を選択できるグロース投資家なら個別株もいいかもしれません。しかし、私のようなインデックス投資やバリュー投資をメインとする私の場合は、ハイテク企業への個別株投資は困難です。
その場合にはQQQへの投資が推奨できます。QQQは、インデックス指数の一つであるナスダック100をなぞったETFです。インデックスのETFだからこそ、私のようなハイテク企業の選球眼に乏しいバリュー投資家であっても、栄枯盛衰の激しいハイテクへの投資を行うことが可能となります。
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