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苦境にあえぐバフェット銘柄【世界第5位の食品企業クラフトハインツ(KHC)への投資について 】

投稿日:2018/6/24 更新日:

現在、生活必需品銘柄の苦境が続いています。

それは偉大な投資家バフェットの集中投資先クラフトハインツ(KHC)も例外ではありません。

今回、そのグラフトハインツ(KHC)への投資について検討してみましょう。

クラフトハインツ(KHC)

沿革

クラフトハインツ(KHC)は、2015年にクラフトフーズとハインツとの合併により設立しました。

その合併は、大株主であるバークシャーと3Gキャピタルによる主導によるものです。パークシャーはみなさんご存知の大投資家バフェット氏が経営する投資会社です。

現在の主要株主は、バフェット氏のパークシャーが26.7%、3Gキャピタルが23.9%と、2社で50%を越えています。

クラフト・ハインツ(KHC)の前企業であるクラフトフーズは非常に長い歴史を持っています。 その設立は1896年にもさかのぼるのです。当初はチーズが主要な販売項目であったものの、その後多種の食品をくわえ、その歴史は100年を越えています。

前企業のハインツについても設立は古く、1876年にもさかのぼります。トマト・ケチャップをはじめて商品化したことから、ハインツの企業としての歩みが始まります。その後、ソースや冷凍食品等の多様な食品とそのポートフォリオを広げていきました。

2015年にクラフトフーズとハインツが合併し、クラフトハインツ(KHC)が設立しました。その売上高は、現在年間260億ドルを越え、販売先は約200カ国と世界の隅々にまで及んでいます。その規模は、世界で5番目の売上高を誇る食品飲料会社となっているのです。

事業内容と展開地域

多種多様の食品群を誇るKHCですが、そのポートフォリオはいくつかにのグループに分けられます。

①ケチャップ、ソース等の調味料
②チーズ製品
③ナッツ
④加工肉製品
⑤その他

KHCは、年間売上高で少なくとも10億ドルを越える8つのブランドがあります。その中でも、①のケチャップ類と、②チーズ製品が売上の半分近くを占めています。

また、販売先は世界の約200カ国と、世界中のほとんどすべての地域に及ぶものの、70%は米国内です。

クラフトハインツ(KHC)の苦境

株価の下落

そのようなバフェット銘柄の巨大な食品会社であるものの、最近の株価については、大きな落ち込みを見せています。

それは、2015年の合併後、KHCが大きな逆風に直面していることによります。

決算

その逆風の詳細を検討する前に、売上、キャッシュフロー、純利益を見てみましょう。

2017年のキャッシュフローの落ち込み認めますが、それは年金機関への拠出によるもので経営上の問題はありません。

さらに、2018年1Qの推移を見てみましょう。

2017Q1 2018Q1
売上高(100万ドル) 6324 6304
営業利益(100万ドル) 1433 1481
純利益(100万ドル) 891 993

売上は、1%の下落にみまわれています。しかし、コスト削減が成功し利益は向上しています。

ミレミアム世代の嗜好の変化

売上低下の原因の第1は、米国でのミレミアム世代の嗜好の変化に起因しています。ミレミアム世代とは、1980年から2000年初頭に生まれたインターネットネイティブ世代です。現在、アメリカでは彼らの嗜好が消費を左右するようになっています。

そのミレミアム世代は、加工食品よりも自然食品を好みます。加工されたハムよりも、ある程度値段が高くても新鮮な肉をを好みます。また、加工されたゼリーやアイスクリームよりも、自然のままの果物やサラダを好むのです。

もちろん、KHCも、ミレミアム世代の嗜好に合わせた自然の風味を残した健康的な食品への開発を行っています。その成果は少しずつ数字に反映されつつあります。しかし、伝統的な強力ブランドの落ち込みを埋めるまでには至っていないのです。そもそも、ブランド浸透には時間がかかるものなのです。

プライベートブランドの普及

さらに売上低下の原因となる2つ目としてプライベートブランドの普及があります。

もう一度、KHCのポートフォリオを見てみましょう。

①ケチャップ、ソース等の調味料
②チーズ製品
③ナッツ
④加工肉製品
⑤その他

①のケチャップやソーズの調味料については、プライベートブランド耐性が強いことが知られています。調味料は一度買えば一回で使い切ることはありません。何回かにわけて使っていきます。そのため試し買いする消費者は少数です。消費者はプライベートブランドを買わないで、いままで使っていたブランドを買うことになります。さらに、自然食品への味付けのために、調味料の出荷はむしろ増加しています。

しかし、②のチーズ類はプライベートブランド浸食への障壁がもっとも低い食品の1つです。さらに、③のナッツもプライベートブランドと大きく差別化できなくなりつつあります。

④の加工肉食品については、ミレミアム世代の嗜好により新鮮な食材が売れ行きを伸ばしていることから、成長が鈍化しています。

クラフトハインツの戦略

そのような逆風に対してのKHCはいかなる経営戦略を描いているのでしょうか。検討してみましょう。

もっとも有用な対策として買収による成長が検討されています。

KHCの筆頭株主であるバフェット氏の投資会社パークシャーと第二位の株主である3Gで50%を越える株式を保有しています。もはやバフェット氏のバークシャーと3Gキャピタルにとって、KHCは投資先というよりも子会社といってもいいでしょう。

まず、パークシャーと3Gの方針は、KHCのコスト削減による財務改善です。そして、その改善された財務状態や経営効率を基礎として、買収による成長戦略を進めていくことなのです。

現在、コスト削減は功を奏し、利益率の改善を認めています。次に、売上の上昇という成長が必要なのです。

その一貫として、昨年の2017年欧州の食品日用品大手ユニリーバに買収を試みました。しかし、欧州企業であるユニリーバはアメリカ企業からの買収に強い抵抗を示し、失敗に終わりました。

欧州企業と米国企業の文化の違い

そもそも、欧州企業とアメリカ企業では時間軸が異なります。それは企業文化の違いです。

かつてインドでユニリーバが石鹸の販売網を広げるにあたり、現地のインド人に対して石鹸の有用性を教育し、インドに長い年月をかけて石鹸を使う生活習慣をもたらしました。四半期ごとに投資効率を要求されるアメリカの株主の要求は、ユニリーバのような長期展望を持つ欧州企業にとって耐えることができません。買収先として、ユニリーバは企業文化が違いすぎたと言わざるえないでしょう。

おそらくは、アメリカ企業や、もう少し規模の小さな欧州企業、さらにアジア系の企業で新興国での売上増加を図る等の検討をすることになるでしょう。

個人投資家としてのリスク管理

しかし、バフェットや3Gキャピタルの買収戦略を期待する前に個人投資家として基本的なことを再検討する必要があります。

投資を決断するときに、他人を期待して購入することは自分の判断を放棄することに他なりません。もしも、他の投資家が判断を変更すれば、投資の前提すら崩れてしまいます。

株式投資のようなリスク資産への投資を行う場合には、リスク管理がもっとも大切なのです。その場合は、最悪を前提に方針を決すべきです。

バフェットや3Gの買収先を見つけることができない場合でも投資価値があるかどうかを検討すべきです。

プライベートブランドとナショナルブランドの攻防の見通し

それは、懸念材料であるプライベートブランドとミレミアム世代の嗜好の変化にKHCが対応できるかどうという点になります。

まず、プライベートブランドついて検討してみましょう。

たしかに昨今プライベートブランドがそのシェアを伸ばしています。しかし、そのためにナショナルブランドが完全に消滅することは考えにくいでしょう。

プライベートブランドがコスト削減にみに注視し、信頼性の低い小規模企業のみに依頼すれば、プライベートブランドそのものの信頼が低下することは疑いありません。

かつてイオンのプライベートブランドである『トップバリュー』は、多くの商品を小規模企業に依頼しコスト削減を行っていました。そのために、質が良くなく、安かろう悪かろうというイメージが定着しました。

他方、イトーヨーカ堂グループのセブンプレミアムは大手企業に依頼していたために、安くないものの品質は保たれていました。製造企業は、ヤマザキナビスコ(現在のヤマザキビスケット)やサントリーと、ナショナルブランドでも競争力のある企業がほとんどです。最近ではコカコーラ社とセブンプレミアムの商品を開発しています。

そのようにプライベートブランドの質の低下は、そのプライベートブランドそのもの競争力が枯渇することになります。そのために、イオンも最近では、プライベートブランドもナショナルブランドで競争力のある企業に依頼するようになっています。その依頼先は、業界で第2,3位の企業が多くなっています。業界で第2,3位なら、製品の質も確実に確保されます。

ナショナルブランドもプライベートブランドも手がける少数企業の寡占化がよりすすみ、いずれプライベートブランドの普及は頭打ちとなると予想されます。

嗜好の変化への見通し

さらに、ミレミアム世代の嗜好の変化といえども、加工食品の需要が消滅することはなく、下げ止まることにはなると予想されます。そもそも、食品ではITのように勝者総取りが起こることはありえません。

さらに、新鮮な食材には高いコストが必要となります。その上、賞味期限が短く閉店間際に値段を下げざるえなくなります。結局、多くの消費者がその値下げの夕方を狙うとなると小売りの利益はほとんど無くなります。そのために、新鮮な食材は定価で売りきれる商品数に絞らざるえなくなります。その結果、新鮮な商品の仕入れが少なくなることとなり、いやおうなく加工食品を購入せざるえなくなります。おそらくは、加工食品の売上減少は底打ちすると考えられます。

さらに、自然の風味を出した加工食品のイノベーションも進んでいます。そのような開発には、流通等から企業規模が重要となります。世界第5位のKHCにはその優位性が十分にあることは明らかです。

海外への展開とアメリカでの人口増加

プライベートブランドやミレミアム世代の嗜好の変化以外に、海外での売上増加が実りつつります。

KHCの2018年の1Qでも、カナダやヨーロッパ、中東、アフリカでは、売上増となっています。さらに人口増加の多いアジアへも浸透しつつあります。

その上、現在70%の売上に寄与しているアメリカ市場も先進国では例外的に人口増加が多い国です。長期では、アメリカ市場での成長も期待できます。

このように、現在苦境に陥っているKHCであっても長期では伸びしろが期待できるといっていいでしょう。さらに栄枯盛衰少ない食品業界であることを勘案すれば、配当目的として保有も可能であると考えられます。

配当

最後のその配当について確認してみましょう。

配当利回り

現在の株価は63.21ドル(2018年6月23日)です。 現在の配当は1株あたり年間2.50です。これにより配当利回りは3.99%の配当利回りとなっています。その利回りは十分に魅力的な数字であることは疑いありません。

配当性向

いくら配当が高くとも、配当性向が高すぎるならその配当利回りを維持することが困難です。一般的に、配当が維持できるかどうかのスクリーニングには、60%の配当性向がめやすとなります。今年2.50ドルの配当が支払われたことに基づき、1株当たり利益は予想では3.77ドルで、配当性向は66%となります。これは基準の60%をわずかに上回る程度であり、そこまで高いリスクではありません。自社株買いにより、配当性向はかなり下がっています。

配当性向と過去の実績

2015年での合併のために、配当に関するデータはそれほど長くはありません。合併時の四半期配当は、1株当たり0.55ドルから0.575ドルになり、さらに0.60ドルから0.625ドルまで増加しています。成長率は年4.2~4.3%程度です。現在の高配当から考えると悪くない成長率と言えます。

配当を目的とした投資先としても十分に魅力はあります。

結論

KHCは、バリュー投資家好みの企業であり、急激な上昇は見込めません。しかし、食品という栄枯盛衰の少ない安定した投資先であり、配当も魅力的です。

ただし、投資するにしても、急ぐ必要はありません。いずれ売上の低下も底打ちするとは思われます。しかし、ある程度の期間が必要です。少額を、数ヶ月単位、あるいは1年単位で時間分散するような投資スタイルでも十分でしょう。

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