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【相対性理論がなければiPhoneでGoogle Mapを使えない】京大教授をバカとけなすホリエモンの限界

投稿日:2018/9/22 更新日:

京都大学の高山佳奈子教授を『バカ』と一蹴したホリエモンこと堀江貴文氏の発言が一時期話題になりました。堀江氏によれば高山教授の仕事は給与に見合っておらす、そもそも世の中の役にはたっていないということのようです。

しかし、そのことが逆に堀江氏の限界を明らかにしています。さらに、同じIT企業家であるApple社のスティーブ・ジョブズとの違いが鮮明に現れているのです。2人のIT起業家の違いは、どのようなハイテク企業が発展し、どのうな企業が消滅していくかを理解する材料となることは疑いありません。

スティーブ・ジョブズは、一見役にたたないことが、後の大きな助けになることをスピーチで強調しているのです。

目次

高山佳奈子京大教授 VS ホリエモン

高山佳奈子教授の給与明細公開

今回のいきさつを簡単に説明しましょう。

高山佳奈子京大教授の給与から『東日本大震災復興財源確保』のために年間60万円の賃金がカットされていました。しかし、それが震災復興の財源として使われた形跡がないために返金を求めたことが発端です。

それをきっかけとして、2014年7月1日に、高山教授は、京都大学の教授への待遇が私大や海外とくらべ良くないと、給与明細をブログに公開することになりました。

高山教授は、当時45歳にして専門分野での第一人者です。そのときの年収が940万円であり、毎月の手取りは引かれて30万円台とのことでした。

ホリエモンのTwitterでの批判

その後、そのブログに対して、2016年4月1日に堀江氏が『何言ってんだこいつ。バカか。』とTwitterで批判したのです。

さらに、報酬を求めるならば起業すればいいとTwitterを続けました。

その上で、堀江氏は、大学教授の研究そのものがやっと世の中の役には立っていないともほのめかしています。

起業よりも得意分野を生かすことが社会貢献

そもそも得意分野が集中することが最も世の中に立つことです。

堀江氏のように起業が向いている人もいるでしょう。しかし、誰もが起業が適しているわけではありません。むしろ、高山教授はその知性を専門分野の研究に振り向けていただくことが世の中に貢献するものと考えられます。

また、たとえ高山教授の研究が世の中に役に貢献していないように見えたとしても、気がつかないところで社会に役に立っていることもありえるのです。短絡的に役に立たないと断じることはできないのです。

スティーブ・ジョブズのスピーチ『点と点をつなげる』

まずは、Apple創業者のスティーブ・ジョブズのスピーチを引用してみましょう。2005年にスタンフォード大学で行われた名スピーチです。

そのスピーチであ3つのテーマについて述べられました。
①『点と点をつなげる』
②『愛と敗北』
③『死について』
がその3つです。

今回3つのうち最初のテーマである『点と点をつなげる』に関して、一部を引用してみましょう。

まずは、点と点をつなげる、ということです。

当時、全米でおそらくもっとも優れたカリグラフの講義を受けることができました。キャンパス中に貼られているポスターや棚のラベルは手書きの美しいカリグラフで彩られていたのです。退学を決めて必須の授業を受ける必要がなくなったので、カリグラフの講義で学ぼうと思えたのです。

もちろん当時は、これがいずれ何かの役に立つとは考えもしなかった。ところが10年後、最初のマッキントッシュを設計していたとき、カリグラフの知識が急によみがえってきたのです。そして、その知識をすべて、マックに注ぎ込みました。美しいフォントを持つ最初のコンピューターの誕生です。もし大学であの講義がなかったら、マックには多様なフォントや字間調整機能も入っていなかったでしょう。

繰り返しですが、将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。運命、カルマ…、何にせよ我々は何かを信じないとやっていけないのです。

2011年10月9日 『日本経済新聞』

相対性理論がないとiPhoneでGoogle Mapを使えない

役に立たない大発見『相対性理論』

当初は何の役に立たないと考えられた20世紀最大の発見を紹介してみましょう。その発見とはアインシュタインの相対性理論です。

かつて相対性理論は世の中には全く役に立ちそうにないと思われていました。しかし、相対性理論がなしでは現在iPhoneでGoogle Mapを使うことはできないのです。

画期的な『相対性理論』の発表

1905年26歳のアインシュタインは、画期的な論文を矢継ぎ早に発表します。

その1つが特殊相対性理論です。
特殊相対性理論は、時間と空間の概念に革命的な変化をもたらします。

それまでは、宇宙のどこでも時間は一定に流れていると考えられていました。
しかし、相対性理論では、速度がはやければはやいほど時間がゆっくりと流れるというのです。
まず、光の90%の速度で動くなら、時間の進み方は0.44倍に遅くなります。
さらに、光の99%の速度で動くなら、時間の進み方は7分の1の遅さになります。
そして、光速で動くなら時間は止まるのです。

相対性理論では宇宙で絶対的なものは光の速さだけなのです。

相対性理論は発表直後から大反響を呼びました。その相対性理論で、それまで謎であった現象が解明されることになったのです。

1912年には一般相対性理論も発表されました。そこでは、重力による時間への影響が論じられました。重力が強ければ、時間がゆっくりと流れるというのです。

そうして、重力が無限大となるブラックホールでは時間は止まることになるのです。

遅れたノーベル物理学賞受賞

しかし、そのような偉大な発見にも関わらず、アインシュタインのノーベル物理学賞の受賞は遅れることになります。しかも、受賞理由は相対性理論ではなく光電効果だったのです。スウェーデン科学アカデミーから送られてきた手紙には『貴下の相対論や重力理論は考慮に入れておりません。』と相対性理論ではないことがことさら強調されていました。

それには理由があります。もともと、ノーベル物理学賞は、『人類に大きな利用価値をもたらすような物理学の新たな発見に対して授与する』ことを目的に設定されました。相対性理論は、光の速度に近づいた世界でないと役にたちません。到底、人類に大きな利用価値をもたらすとは考えられなかったからなのです。

GPSに不可欠の『相対性理論』

しかし、現在、相対性理論は私たちの生活に大きく密接に関わっています。iPhoneでGoogleMapを使う際に利用されているGPS。そのGSPの計算には相対性理論が不可欠なのです。

まず、特殊相対性理論によると、速度がはやいほど時間はゆっくりと流れます。
一方、一般相対性理論では、重力が強いほど時間がゆっくりと流れます。

人工衛星の軌道で地球に落ちないように秒速3.88Kmで移動しています。地上よりも速度がはやいために『時間がゆっくりと流れる』効果が生じるのです。

しかし、人工衛星は、地表の重力よりも弱いところで移動しています。重力が地上より弱いために『時間が早く流れる』効果が生じるのです。

相対性理論と一般相対性理論の両方の効果で、地表に比べて『時間がゆっくりと流れる』という効果と『時間が早く流れる』という効果が生じます。差し引き1日で0.0000286秒『時間がゆっくり流れる』ことになります。

その時間の差はGPSでは1日9kmもの誤差となって現れるのです。それでは全く役に立ちません。相対性理論により時間を補正してはじめてGPSとして機能するのです。

そのようにして、ジョブズの言うように、相対性理論という点が、iPhoneでGoogle Mapを使うという点と結びついたのです。

日本の刑法学第一人者 高山佳奈子教授

高山教授の業績

最後に、高山教授の研究がほんとうに世の中の立っていないのか検証してみましょう。

高山教授の研究分野は刑法です。

刑事罰が世の中に必要であることは言うまでもありません。しかし、世の中に不可欠であるにもかかわらず、刑法の研究はお金になる分野ではありません。お金にならなくとも必要なのです。

さらに高山教授ほどの第一人者となると、大学での研究のみならず、裁判所から意見書の依頼が絶えることがありません。その意見書に関しても精力的に携われておられ、日本の刑事司法に大きな貢献をされています。

裁判所に提出された高山教授による「堀江氏は無罪」「実刑判決は不当」という意見書

堀江氏は、2006年1月23日に証券取引法違反にて逮捕に至り、2月13日に起訴されています。

その後、2011年4月26日に最高裁での上告棄却により堀江氏の2年6ヶ月の実刑判決が確定しました。

堀江氏本人が、刑事裁判での被告人でした。当然、少しでも冤罪を減らし刑事罰の濫用を防止することをテーマとしている高山教授の研究が世の中に必要であることは理解できていないはずはありません。

それだけではなく、高山佳奈子京大教授はライブドア事件弁護団の推薦で「堀江氏は無罪」「実刑判決は不当」という意見書も書いているのです。少なくとも高山教授による意見書は、堀江氏の刑罰を緩和するに資するものであったことは疑いありません。もちろん、堀江氏の刑罰を少しでも緩和することが世の中の役に立ったのかはわかりません。しかし、高山教授の仕事という点と、堀江氏の刑罰の緩和という点が結びついているのです。高山教授の業績は単なる点にはとどまらないのです。

山口厚教授

高山教授の卒業大学は、京都大学ではなく東京大学です。その東京大学で、刑法学の権威者である山口厚名誉教授の門下生として刑法研究に携わっておられました。

現在、山口厚名誉教授は最高裁の判事をつとめられています。

最高裁の判事の1名は学者出身者で構成されています。学者が判事をして役に立っているのか疑問に思われるかもしれません。しかし、学者ならではの貢献があるのです。

反骨の学者出身裁判官 団藤重光氏

私自身が評価している最高裁判事の1人に、団藤重光氏がいます。

団藤重光氏は、戦後日本の刑事法学の基礎をつくった偉大な学者です。戦前には、天皇機関説事件、二・二六事件を見届け、戦後には刑事訴訟法起草でGHQと渡り合っています。その後、東大教授、東大法学部長を歴任後、最高裁判事に任命されました。

多くの裁判官は、出世のために検察の意見に沿った判決をすることが多く、上の顔色ばかりをうかがうヒラメ裁判官と揶揄されています。そのような最高裁の判事の地位にあって、団藤氏は常に反骨精神を貫きとおします。後年、私ほど反対意見を書いた最高裁判事はいないとも言われています。

団藤氏に、インタビューをした新聞記事があります。引用してみましょう。

「あれほど反対意見を書かなかったら、団藤先生は最高裁長官になっていたという人がいますが。」
「ええ、いますね。」
「後悔はしていないですか。」
「なあに、後悔? あっはははは。なんで後悔するの。間違っていないもの。間違ったことをしたら後悔しないとけない。正しければ後悔してはいけない。間違っていない正しいことを後悔する。とんでもないよ。」

2008年2月29日『毎日新聞』

学者出身だからこそ、官僚体制に染まらない反骨精神あふれる判事として活躍できたのでしょう。

もしも、団藤氏がホリエモンの最高裁の判決に携わっておられたなら、こんな反対意見を書かれたことでしょう。

『1000億円を超える粉飾決算の山一証券や、東芝、オリンパスいは執行猶予をつけたにもかかわらず、堀江貴文に執行猶予がつかないのはどうしてなのか。単に権威にこびているだけではないのか。最高裁がそんな姿勢で日本の民主主義を守れるのか。堀江貴文には執行猶予をつけることが相当である。』

そんな反対意見が目に浮かぶようです。

まとめ

目の前の事柄がすぐに役に立つかどうかを考える堀江氏と、短期的には役に立たなくとも長期的には有益となりうることを重視するジョブズの違いが、ライブドアとAppleを分けた理由の一ついっていいのではないでしょうか。

今回、APPLEスティーブ・ジョブズの名スピーチを一部紹介しました。そのスピーチには日本の伝統文化が深く関わっているのです。『Appleの源流となる日本文化』の記事で、そのことについて深く掘り下げていく予定です。

また、ライブドア事件についても、『京大教授をバカとけなすホリエモンの限界 その2』で、より理解を深めていく予定です。

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