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【広告主から見るGoogle暴落】ビジネスモデル劣化による急成長

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4月30日に、決算発表を受けてGoogleが暴落しました。

売上が前年比17%増と成長が鈍化したとのことです。

バリュー投資家の立場からみれは、17%も成長しているなら素晴らしいというほかありません。とてもGoogleのビジネス環境が悪化しているとは思えません。

しかし、広告主の立場に視点を移すなら別の景色が見えてきます。2年以上前よりGoogleビジネスモデルの劣化を肌で感じていたからです。直近でのGoogleの急成長はビジネスモデルが劣化していたからこそ可能であったといっていいかもしれません。

今回、その背景を説明していきましょう。

2019年第1四半期のGoogle決算

売上高の成長鈍化

まず、決算について紹介します。

2019年第一四半期(1月~3月期)の売上高は、前年同期と比べ17%増の363億3900万ドルでした。昨年は27%成長であったことから、成長鈍化とも言えます。

広告事業の成長鈍化

Googleの売上高の大半は広告事業です。広告部門にフォーカスをあててみましょう。

2019年第一四半期での広告部門の売上は、前年度比15.3%増の307億2000万ドルとなりました。前年同期が24%増だったことを考えると確かに成長が鈍化しています。

クリック単価の下落

広告部門で売上高が減速した要因は『YouTube』の成長率鈍化です。

しかし、検索連動型広告でも1クリックの単価が9%減と大きく落ち込みました。昨年は、クリック単価は39%も上昇していたのです。

クリック単価が下落したものの数で補うことで、成長は確保しました。しかし、単価の下落を量でカバーすることは、ビジネスモデル劣化の場合によくみられる現象です。

検索連動型広告の成長と劣化

広告主としての運営

いったいどのようなことが起きているのでしょうか。

Googleの広告主としての立場から述べていきたいと思います。

私自身は最近までクリニックを運営していました。しかし、今年4月でテナント契約が満期となり、更新しないで閉院することにしました。

決算書の上では極めて良好な経営状態でした。専門とする手術では県内で最多の件数になっていたものもあったのです。

しかし、人手不足で求人が困難となり、一人でも欠けると運営が困難な状態に陥っていました。退職を表明した職員もいたために、テナント契約が切れるまで勤務すれば退職金を支払う約束で、なんとか満期まで乗り切ることができました。

そうして、平成の終焉を機会に、12年間の運営を終えるとしました。

月30万円のGoogleへの広告費

クリニックの運営には広告が必要です。最後の2年間はGoogleへ支払う広告費は月に30万円にも及んでいました。

検索連動型広告

媒体は検索連動型広告です。ご存じの方がほとんどと思われますが、改めて説明しましょう。

Googleでキーワード検索をすると、検索結果とともに、キーワードに連動する広告が提示されます。

例えば『新宿 スペイン料理』というキーワードで検索をかけると、検索結果とともに、該当するレストランの広告も提示されます。

かつての王者Yahoo!

クリニック開業時の2007年では、検索連動型広告には月に5万円で足りていました。

当時は、圧倒的にYahoo!が強く、Yahoo!に8割、Googleに2割に振り分けていました。Googleへは月1万円の支出だったのです。

Microsoftの一極支配

当時は、まだiPhoneも発売されていません。まさに、IT業界はMicrosoftの一極支配の時代でした。

インターネットを閲覧するには、WindowsXPのInternet Explorerを立ち上げる以外にほとんど手段がありません。Internet Explorerでは、トップページを決める必要があり、多くのユーザーはYahoo!Japanを設定していました。

IT業界の覇権交代

しかし、その後IT業界が激変していきます。

2008年6月に日本でiPhoneが発売されました。

2008年8月5日に日本でGoogleMapでストリートビューが開始されました。

2009年7月10日には、日本でAndroidのスマートフォンが発売となりました。

ネット閲覧が、Windowsから、iPhoneとAndroidの時代となっていきます。IT業界の覇権も、MicrosoftからAppleとGoogleへと移りかわっていったのです。

検索連動型広告の覇権交代

徐々に検索のシェアもYahoo!からGoogleに移っていきます。そのため、検索連動型広告もGoogleの割合が増えていくことになりました。

2012年ごろには、検索連動型広告を5万円から10万円に増やすとともに、GoogleとYahoo!の割合を5割としました。Googleへの広告費は月に5万円になっていきました。

2014年には、ネット広告費を月20万円に増やしました。割合もGoogleに8割、Yahoo!に2割としました。Googleへの広告費は月に16万円となりました。

2016年には月30万円に増やしました。さらに、Yahoo!を解約してネット広告をすべてGoogleにしました。毎月30万円をGoogle広告に投じていくことになったのです。

ネット広告市場の爆発的拡大

そこから、3つの変化を整理することができます。

1番目は、ネット広告市場げの爆発的な増加です。

私の経営するクリニックですら、5万円、10万円、20万円、30万円とネット広告費が増加しています。12年間に6倍になっているのです。

Googleの急成長

2番目は、Yahoo!の優位が崩れ、主導権がGoogleへ移行していったことです。

Googleへの支払いだけをみるなら、12年前に月1万円であったのが、最後は月30万円と増加しました。まさに、30倍にも達しているのです。

検索連動型広告の劣化

そして、3番目の変化です。この記事のメインとなるテーマです。

当初5万円で足りていた費用が、30万円になったということは、対費用効果が悪化していることを意味します。

しかも、当初は5万円の費用で十分に効果があった広告が、最後には30万円でも不十分になってきたのです。

長く診療をしているとリピートしてくれる受診者も増えてきます。対費用効果が同じなら、検索連動型広告への出費は低下するはずです。しかし、ビジネスモデルの劣化から、対費用効果が悪化し、より広告費をかけなくてはいけなくなったのです。

『検索連動型広告』劣化の背景

ネット人口の拡大

検索連動型広告でのクリックが、購買に結びつかなくなってきたのです。その背景には、いつくかの要因があります。それぞれの背景をあげてみましょう。

まず、ネット人口の増加です。

ネット人口が増加することで、目的なくクリックする層が増えてきたのです。

広告ブロックアプリ

さらに購買力が高く、ITリテラシーに優れた層が、ネット広告をブロックするアプリを入れ始めたのです。

専門プラットフォームの台頭

検索連動型広告は、クリック単価を高く設定した会社から優先して表示されます。そのために、競争の激しい業界であれば、入札額が高くなり、Googleの利益率も高くなります。

クリック単価の高いホテルや外食産業で専門のプラットフォーマーに移行する現象も起きてきました。

横浜駅近くの、フレンチに行きたいなと思うときにどのように行く店を決めるでしょうか。

『横浜駅、フレンチ』とGoogle検索して、そこから、『ぐるなび』や『Hot Pepper』を開いて候補を探すことが増えてきています。

旅行先のホテルを探すときも同様です。

箱根に宿泊するときを考えてみましょう。『箱根 ホテル』でGoogle検索に入っても、最終的には『楽天トラベル』や『じゃらん』で宿泊先を決めるのではないでしょうか。

ホテルや外食のようなクリック単価の高い業界で、より専門的なプラットフォーマーが出現し、検索エンジンの優位性が低下してきました。

口コミプラットフォームの台頭

また、SNSの口コミの広告を連動させる、FacebookやTwitterの成長がGoogleを凌駕しています。検索連動よりも口コミ連動の方が、最終的な購買につながるからです。

『検索連動型広告』の優位性

優れたビジネスモデル『検索連動型広告』

それでも検索連動型広告は優れたビジネスモデルであることはかわりません。まだ凌駕する広告媒体は出現していないのです。購買につがりにくいなら、より費用を投じるしかありません。

私のクリニックでも、検索連動型広告の対費用効果が低下しているために、経費を10万円から20万円へ、そして20万円から30万円に増やしました。

このようにして、Googleのビジネスモデルが劣化が、Googleに爆発的な収益の増加をもたらすといったパラドックスが生じたのです。

それは検索連動型広告が、従来にない極めて優れたビジネスモデルだからに他なりません。

小規模組織の経営手法『ランチェスター戦略』

では、検索連動型広告がどうして優れているのか説明していきましょう。

まず、小規模の事業主がとるべき経営手法は、ランチェスター戦略です。

ランチェスター戦略とは何でしょうか。

第一次世界大戦時、イギリス人の戦闘機エンジニアのランチェスターが、兵力数と武器性能が、損害量を決めることを発見しました。これがランチェスター法則です。

第二次世界大戦にはアメリカ軍がランチェスター法則を応用し、戦略を立案しました。

戦後、そのランチェスター戦略が産業界へ応用されていきます。フォルクスワーゲン社がカナダに進出した際にもランチェスター戦略が使われました。

武器効率

それでは、弱者の戦略で知られるそのランチェスター戦略第一法則をあげてみましょう。

戦闘力=武器効率(質)× 兵力数(量)

そこから、兵力で劣る小規模の組織が勝つ方法が明らかになります。

総合力をつけるのではなく、狭い部門で誰にも負けない技術を磨くことです。そのためには、分野を絞り、そこに経営資源のすべてを注ぎ込むことです。そのようにして武器効率を高めていくのです。

局地戦

しかし、武器効率が高くとも、大手が人海戦術をとるなら対抗できません。

そのために、武器効率を上げた狭い分野で、局地戦に持ち込むことが必要です。

大手企業の場合には、局地戦で巨大な資本や人材を投資することはできません。大手が相手にしないニッチで市場での競争優位性を確保することで、小規模組織でも勝機を見いだすことができるのです。

ベトナム戦争でも、ベトナム兵はジャングルに潜み局地戦に持ち込みアメリカの大兵力を無力化しました。

弱者がランチェスター戦略をとる場合に、現時点で最高の広告媒体は、検索連動型広告に他なりません。

テレビ広告

テレビ広告は、一握りの大手企業のみが使える媒体です。そもそも、小規模組織を相手にはしていません。

折り込み広告

新聞の折り込みは、確かに局地的です。確かに、食品スーパーの安売り広告のように誰もが使う手段なら有効です。

しかし、専門に特化した医療機関では無駄打ちが多くなりすぎ、対費用効果が著しく劣ります。

しかも、20年前から新聞購入者は低下の一途をたどっています。

小規模組織に適した『検索連動型広告』

ランチェスター戦略を適応するにあたり、従来の広告では有効な戦略を立てることができなかったのです。

しかし、検索連動型広告は、そのような小規模組織に極めて適合する媒体です。

まず、検索連動型広告では、県を指定できます。その県内で、病気のキーワード検索すればクリニックの広告を出すように設定できます。

限られた地域で、キーワード検索するような問題意識があり購買につながる層に集中的に広告と出すことができるのです。しかも、何度も検索を行うことが多く繰り返し広告を提示することができるのです。

新規開業で、県内トップの手術件数まで増やすことができたのは、Googleの検索連動型広告という優れたビジネスモデルがあってはじめて可能であったのです。

いままでどの広告媒体も相手にしていなかった小規模組織という顧客を獲得することで、Googleはブルーオーシャンを開拓し、急成長を遂げることが可能となったのです。

結論

現時点では、検索連動型広告こそ最もランチェスター戦略に沿った広告手段に他なりません。広告主としては、対費用効果が悪化しても、より多額の広告費をかけるしかないのです。

直近のGoogleの急激な成長は、そのようなビジネスモデルの劣化が大きく寄与してたのです。

しかし、ネット広告で破壊的イノベーションが起こるなら、現在のGoogleの地位も大きく損なわれるかもしれません。

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