現在、生活必需品の下落が続いています。生活必需品銘柄の代表的なブルーチップのColgate-Palmolive(CL)も例外ではありません。その50年以上増配を続けているブルーチップも52週間ぶりの安値の下落を続けているのです。
今回、連続増配企業の投資をメインとするバリュー投資家としていかに対処すべきか検討していきます。
目次
Colgate-Palmolive
『花王』との競争を避ける効率を重視する経営方針
Colgate-Palmolive(CL)は家庭用品企業としての世界の巨人です。しかし、私たち日本人は、Colgate-Palmoliveの商品を身近に接することはありません。それは、経営陣が競争の激しい日本市場での競争を避けたことによります。
日本国内での家庭用品市場では絶対王者である『花王』が存在しています。Colgate-Palmoliveの経営陣はその絶対王者との消耗戦を避けることを選択したのです。それは『花王』との過酷な競争から商品の質を高めることで、世界での競争力に磨きをかけることを選択したP&Gと極めて対照的です。
沿革
まずは、Colgate-Palmolive(CL)の沿革を確認してみましょう。
Colgate-Palmoliveは1806年ニューヨーク市で Colgateがデンプン、石鹸、ろうそく事業を始めたことから始まります。
その後200年以上経過し、Colgate-Palmoliveは、世界中で200以上の国で製品を販売し、年間売上高は150億ドルに達するグローバル多国籍企業にまで発展しました。
商品のポートフォリオ
現在Colgate-Palmoliveのポートフォリオは、
①口腔ケア製品
②石鹸などのパーソナルケア製品
③ホームケア製品
④ペットフードなどのペット食品製品
の4つのカテゴリーに分かれています
特に、口腔ケア製品(歯ブラシ、歯磨き粉、うがい薬等)は売上高の48%を占めています。その他パーソナルケア製品(消臭剤、石鹸、シャワージェル)は19%、ホームケア製品は18%、ペットフードが15%を締めています。
口腔ケア製品(歯磨き粉、歯ブラシ)での支配的地位
その中でも、口腔ケア製品こそが、Colgate-Palmoliveが世界で支配的地位を保持してるカテゴリーなのです。その世界シェアは歯磨き粉で42.9%、歯ブラシで32.7%にも及ぶのです。
さらに、Colgate-Palmoliveの口腔ケア製品の市場シェアは長年にわたって着実に増加しているのです。
このような高いシェアのため、Colgate-Palmoliveは価格の高いプレミアム製品の販売力を持つとともに、市場でも価格設定力を保有する競争優位性を保持しているのです。
景気後退期の耐性
歯ブラシや歯磨き粉は景気に左右されることはほとんどありません。そのためにColgate-Palmoliveは、景気後退期においても一貫した収益性を確保することができます。景気後退期での極めて強い耐性を保持しているのです。
壊滅的な不況であったリーマンショック時にColgate-Palmoliveの1株当たり利益がどのように推移したか追ってみましょう。
決算年 | 一株当たりの利益(ドル) | 前年との利益の増減 |
2007年 | 1.69 | |
2008年 | 1.83 | 8.3%増 |
2009年 | 2.19 | 20%増 |
2010年 | 2.16 | 1.4%減 |
2008年と2009年の最悪の景気後退の最悪であってもプラスの利益成長率を達成しました。特に2009年に2は0%の収益成長率を達成したのです。
2010年の利益はわずかに落ちましたが、2011年以降は再び増加しました。
売上高の停滞
しかし、その後Colgate-Palmoliveの成長率は停滞することになります。
10年間の、売上高、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフロー、純利益の推移を見てみましょう。
売上高の伸びは、時間とともに徐々に減少しています。 2000年代中期中盤から一桁台半ばの成長をへて、2013年に174 億ドルとピークに達します。その後、売上高は低下し、2016年には、151億ドルにまで低下します。2017年には154 億ドルに回復しました。しかし、最近の停滞から、Colgate-Palmolive成長がピークに達したのではないかとの懸念が高まっています。
配当王
配当金を50以上連続して増額している企業を配当王と表現します。米国株では、2018年時点で26の企業は配当王に属しています。
Colgate-Palmoliveは、その数少ない配当王企業です。
Colgate-Palmoliveは1895年以来中断なく配当を還元してます。そして、最近では、56年間連続して配当を増額しているのです。
しかし、売上やフリーキャッシュフローの停滞から、配当増配率も低下しています。
今後の見通し
新興国での展開
そのままColgate-Palmoliveピークアウトし、衰退するかどうかの検討が必要です。
まず、売上の地理的展開を確認しましょう。売上高は、
北米(20%)
ラテンアメリカ(25%)
ヨーロッパ(16%)
アジア太平洋(18%)
アフリカ/中東(6%)
に分散しています。その中でもラテンアメリカ、アジア太平洋の新興国市場の展開が鍵となります。
今後、人口増加が著しく多数の中産階級が誕生する新興国で、栄枯盛衰の少ない歯ブラシや歯磨き粉のビジネス優位に立てるなら、Colgate-Palmoliveに確実な収益増加がもたらされるからです。
特にアジア太平洋地域で急速な経済成長を遂げているとともに、莫大な人口を誇る中国とインドが重要となります。
今回2018年第一四半期のColgate-Palmoliveの売上高は北米で1%増加でした。対して、アジア太平洋およびラテンアメリカでの有機的売上高は2.5%増加しました。そのアジア太平洋地域の中でもインドでは14%にもおよぶ売上増加が持たされてたのでした。
2030年までに、世界人口は大幅に増加すると予想され、その大部分は新興市場によるものと推定されています。中でも中国、インド、ラテンアメリカなどの新興市場では人口の持続的な伸びが見込まれます。
現在、Colgate-Palmoliveの歯磨き粉は、中国で31%のシェアを確保しています。さらに、インドでは55%、ブラジル73%ものシェアを確保しています。
主要な新興国でも支配的地位を確保しつつあると言っていいでしょう。このような新興国での圧倒的なシェアは、Colgate-Palmoliveにゆっくりであるものの確実な売上の増加をもたらすと判断できます。
損益分岐点
たしかに、先進国での売上は停滞しています。それは人口増加率の低下とともに、オンライン販売の人気の高まりも関与しています。しかし、先進国でも支配的なシェアを確保している以上、他社に比べ、極めて損益分岐点は低くなっていることは明らかです。
そのような損益分岐点の低さから、プライベートブランドが利益が出るかどうかでの販売を余儀なくされている価格であっても、Colgate-Palmoliveに豊富なキャッシュフローを生み出すことが出来るのです。
オンライン販売や、プライベートブランドの普及は、Colgate-Palmolive以外の企業の淘汰を促進することになると考えていいでしょう。
今後Colgate-Palmoliveには、ある程度の先進国での売上低下はあるにしても、安定したキャッシュフローがもたらされることは確実です。さらに、新興国での売上増加は、その先進国での停滞を凌ぐ利益をゆっくりと、そいて確実にもたらすことでしょう。
投資方針
Colgate-Palmoliveは偉大な企業です。それは、55年連続増配という配当王であることとともに、口腔ケア領域で、支配的なシェアを誇っていることからも明らかです。口腔ケア領域である、歯ブラシ、歯磨き粉、マウスウオッシュ等は今後のビジネスを根底から変えるような破壊的イノベーションが出現するはずもなく、今後の安定した利益を投資家にもたらすことは疑いありません。
だからこそ、それは、52週での最安値でありながらも、PER26倍というプレミア価格がついているのです。
バリュー投資家がもっとも高い利益をあげるのは、割安な資産を買い、まめにナンピン買いをしているうちに、価格が分析どおりに上昇した場合である。
『投資で一番大切な20の教え』ハワード・マークス著
永続性の高いColgate-Palmoliveがいつか下落から回復する可能性は極めて高く、ナンピンする価値があることは言うまでもありません。
しかし、プレミア価格が上乗せされている段階で、どこまで下がるかを見通すことは不可能です。
そのために、投資する場合、少額ずつ時間を分散し、計画的に投資すべきことが大切です。
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