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高齢者を狙った『回転売買』【ボッタクリ金融商品が復活する背景】

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1月20日読売新聞ニュースで、証券会社による外国株の『回転売買』が横行し、損失を出す高齢者が目立つようになっていることが報じられました。

投資家を餌食にする『回転売買』

株「回転売買」横行…手数料6400万円も

まず、記事を抜粋してみましょう。

 「販売員にうまく乗せられ、資産の多くを手数料で持っていかれた」。昨年7月までの約6年間、準大手証券会社を通じて外国株などの売買を繰り返した東京都内の女性(74)は憤る。

女性は2011年、死亡した夫から4000万円相当の大手企業株などを相続。投資経験はなかったが、弔問に来た証券販売員から「財産は有効活用しないと損ですよ」と勧誘され、相続した株を外国株に買い替えるなどし、計約1億4000万円分を投資に充てた。

損失が出ても販売員の上司らから「会社のチームが支えるから大丈夫」と言われ、外国株や新興企業株の短期売買を繰り返した。だが、損失が膨らみ、弁護士に相談。それまでの取引を計算すると、利益はほぼ出ていないのに委託手数料の総額は約6400万円にも上っていた。

女性から相談を受けた弁護士は取材に「まっとうな取引ではなく、顧客を手数料稼ぎの道具としか見ていない」と証券会社を批判。一方、同社は「コメントできない」としている。

読売新聞ニュース 平成31年1月20日

『回転売買』とは

まず、『回転売買』について説明してみましょう。

恐らく、テーマ株を次々と乗り換えるような営業だったのでしょう。6年前なら、原油価格が100ドルを超えシェールガスが脚光を浴びていました。原油暴落後はバイオ株が高騰しました。その後、ITや人工知能株が注目をされていました。そのようなテーマ株の投資信託に次々と乗り換えるように営業したのではないかと思われます。

『回転売買』に使われる投資信託

大手証券会社で売れ行き好調な海外株の投資信託をみてみましょう。『○△医療ファンド』や『△●米国成長株ファンド』がランクインしています。

手数料は、下記の通りです。

報酬額(運用総額の%)
購入手数料 3.24%
信託報酬 1.78%
信託財産保留額 0.3%

信託財産保留額は、解約時に必要な手数料です。

購入手数料が3.24%という額が目を引きます。1億4000万円なら、購入手数料は453万円にものぼります。

『回転売買』は売買を繰り返させることで莫大な手数料を稼ぐことが目的なのです。

回転売買のシミュレーション

では、いったいどれぐらいの頻度の回転売買だったのでしょうか。

まず、年に2.25回乗り換えたとしましょう。1年に2回の回転売買で、4年に1回は年3回という計算です。1年間の総手数料は9.945%となります。年間手数料9.945%も支払ってリターンが期待できないことは、米国株ブログに訪れるみなさんならおわかりと思います。

新聞記事では取引では利益が出ていないと言うことです。ほとんど利益がない運用で、年間9.745%の手数料がかかるなら、6年間でどれぐらいの手数料がかかるのでしょうか。1億4000万円を元金として、シミュレーションしてみましょう。

運用年数 資産総額(円) 手数料(円)
0 14000 1365
1 12635 1231
2 11404 1112
3 10292 1003
4 9289 905
5 8384 817
6 7742
手数料合計 6433

6年間の手数料が6433万円ということで新聞記事の6400万円に近い額となっています。これで証券会社がどのような回転売買を顧客にさせていたかが理解できることでしょう。

金融庁 森長官

異色の官僚 森信親金融庁長官

今後、このような回転売買で資産を失う高齢者が続発することが予想されます。

それは、昨年2018年7月に、異色の官僚 森信親金融庁長官が退任したことによります。

2015年7月、異色の官僚である森信親氏が金融庁長官に就任しました。長官は「手数料獲得が優先されるビジネスは、そもそも社会的に続ける価値があるのでしょうか」と金融機関を強く批判しました。

森長官の発言は金融機関の幹部は顔色を変えることになりました。

さらに、長官は「回転売買」をチェックするために、顧客の売買頻度をモニタリングし、回転売買の撲滅に取り組みました。

積立NISAによる優れたインデックス投資信託の誕生

森長官は、理想的なインデックス投資を普及させるために、積立NISAも導入しました。その結果、ノーロード(購入手数料無料)で、信託報酬の低い投資信託が誕生したのです。

以前説明した『楽天全米株式インデックスファンド』や『三菱UFJ国際投信のeMAXIS Slim米国株式(S&P500)』がその代表です。森長官が就任していなかったならそのような優れた投資信託が生まれることはなかったでしょう。

森長官の退任

通常、金融庁長官の任期は2年です。しかし、菅義偉官房長官、麻生太郎財務相から慰留され森長官は3年目に突入しました。

しかし、仮想通貨交換業者コインチェックの不正流出事件や「かぼちゃの馬車」向けのスルガ銀行の不適切融資で批判を浴びることになります。

森長官の顔色をうかがってきた金融業界は、ここぞとばかりメディアを使い「史上最低長官の罪を問え!」といった過激な見出しで森氏の責任を追求しました。そもそも、メディアは視聴者のためにあるのではなく、スポンサーのために存在するのです。

2018年7月に森信親長官は退任することになりました。

「森長官が退任するまで我慢すればいい」と息を潜めていた金融機関は、一息つくことになりました。そうして、「これからは毎月分配型をガンガン販売できる。それも高速回転売買だ」気勢を上げることになったのです。

インデックス投資のシミュレーション

森長官の目指すインデックス投資は、リチャード・エリス氏やマルキール氏の趣旨にとった投資スタイルです。

新聞記事では、投資開始時期が2012年でした。当時は『楽天全米株式インデックスファンド』や『三菱UFJ国際投信のeMAXIS Slim米国株式(S&P500)』もありませんでした。ただし、仮定として、当時そのようなインデックスを購入したとしてみましょう。

販売手数料無料で信託報酬は0.017%ほどです。購入時も解約時も手数料は不要です。

当時ダウ平均は、13000ドル程度で、1ドル80円程度でした。現在、ダウ平均は24000ドル程度で、1ドル109円です。円建では倍以上になっています。手数料をシミュレーションでをしたところ合計182万円でした。

いかに、インデックス投資が優れているかが理解できると思われます。

そもそも、インデックス投資では、金融機関は巨利を生み出すことはできません。

森長官の顔色をうかがう必要のなくなった金融機関が、182万円の手数料で顧客に利益をもたらす商品を販売するでしょうか。あるいは、回転売買で顧客を犠牲にして6000万円以上の手数料を得ようとするでしょうか。火を見るよりも明らかです。

米国株ブログを見てくれるような読者の方は心配ないものの、家族や親族への金融機関の営業には注視しなくてはいけません。

参考)
バフェットも推奨する『インデックス投資』
猿のダーツに勝てないエリート『金融業界にとって不都合なインデックス投資の真実』
なぜ金融のプロは猿に負けるのか『インデックス投資の勧め』
投資家がバンガード社を選択する理由【インデックスファンド普及の困難な道のり】

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