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【iPS時代にも成長が予想される医療機器企業】ベクトン・ディキンソン(BDX)

投稿日:2018/12/8 更新日:

今回は、ベクトン・ディキンソン(BDX)を紹介しましょう。BDXは世界的なグローバル医療機器メーカーです。

医療機器メーカーは特許切れリスクが少ないことが知られています。それが特許切れで大きく業績が左右される製薬会社との違いです。そのために多くのグローバル医療機器メーカーは、安定した収益から連続増配記録を更新しています。

今回紹介するベクトン・ディキンソン(BDX)も例外ではありません。

BDXは47年にもわたる連続増配の記録を保持しています。それは、高いレベルのフリーキャッシュフローを生み出し、その収益を積極的に株主に還元していることを意味しています。

しかし、医療機器業界にも破壊的イノベーションの波が押し寄せようとしています。それは、21世紀最大の発見ともいわれる山中伸弥教授によるiPS細胞です。

BDXがその破壊的イノベーションに飲み込まれるのか、あるいは成長を加速することになるのかも検討してみましょう。

ベクトン・ディキンソン(BDX)

沿革

ベクトン・ディキンソンは、世界最大の医療機器メーカーの1つです。その販売エリアは190カ国以上にもおよび、約5万人にも及ぶ従業員を抱えています。

その世界的なグローバルヘルスケア企業も黎明期は、小さな個人商店から始まります。

1897年、文具用品のセールスマンをしていたディキンソンと医療品企業で勤務していたベクトンが、共同で医療品企業を設立しました。

最初の注文は、1本2.5ドル注射器という記録が残っています。

そこから、驚異的に発展を遂げていきます。

1918年に画期的な包帯を開発します。耐久性に優れ、通気性も良好という高い品質の包帯は、世界中に普及していくこととなります。

1949年に真空管採血器具を開発し、1952年には滅菌済みの使い捨ての医療機器を製品化します。

そうして、世界的な医療機器メーカーとして揺るぎない地位を築いていくことになるのです。

巨大企業となったBDXであるものの、その歩みは着実であるものの緩やかな成長でした。それは、大規模買収を避け、高品質の手堅い商品を自社で開発することにこだわっていたためです。

しかし、2015年からその経営戦略は大きく変化することになります。

2015年には、医療機器や診断製品の提供者であるCareFusionを122億ドルで買収しました。その金額は、これまでBDXが買収した最大額の20倍にも達したのです。

2017年の終わりには米国の大手医療機器メーカーC.R. Bardの買収を完了しました。 その買収額は240億ドルにも及ぶことになりました。

このような大型買収により、BDXは医療の消耗品をベースとする企業から、ヘルスケア業界でサービスと技術を供給する企業へと変貌していきました。現在、BDXの事業セグメントは大きく3つに分かれています。

事業内容

それでは、ベクトン・ディキンソン(BDX)の3つの事業セグメントについて説明してみましょう。

それは、
① メディカル部門(売上高の53%)
② ライフサイエンス部門(売上高の25%)
③ 侵襲性医療機器部門(売上高の21%)
の3つです。

もともと、BDXのセグメントは①メディカル部門と②ライフサイエンス部門でした。C.R. Bardを買収すること③侵襲性医療機器の部門が加わることになりました。

メディカル部門

まず、①のメディカル部門について説明してみましょう。

BDXが最初に販売した注射器も依然としてBDX主力商品です。さらに注射針も古くからの商品です。

末梢静脈の留置針もあります。留置針のイメージができないかもしれません。まず説明してみましょう。

入院して長期間点滴を行う場合に、静脈に点滴の針をそのままにしておくことはできません。寝返りやトイレ等への移動で腕を動かした場合に血管が破れてしまいます。そのために、ビニール製の外筒を血管内に留置して点滴につなぐことになります。最初挿入するときは、内筒に針があります。針で静脈血管に挿入したあとで、針を抜いて外筒は残して点滴をつなぎます。

YouTubeを添付してみましょう。読むよりも見るほうが実感としてわかりやすいです。

ただし、注射器、注射針、留置針については、日本でベクトンディキンソン製はあまり使われてはいません。テルモ社やニプロ社の製品が広く普及しています。それは商品がコモディティ化しつつあることを意味しています。

逆に、価格決定力があり利益率の高い商品はインスリン注射用のマイクロ針です。それは、糖尿病でインスリンが必要となった患者が、自宅で自分でインスリンを投与するための針です。非常に細い針で蚊にさされたぐらいの感覚しかありません。インスリン注射針は、日本でもBDXが依然として高いシェアを確保しています。

イメージしにくいのでyouTubeの動画を挿入してみましょう。0:55あたりから、インスリン用のマイクロ針が出てきます。

その他のメディカル商品のセグメントには、麻酔および呼吸管理機器や、患者安全サービス、薬物送達システムがあります。それは、2015年に買収したCareFusionの事業です。CareFusionの買収により、メディカル部門は、消耗品の提供から、ヘルスケアのトータルサービスとより奥行きが深くなり、参入障壁を高くすることが可能となったと考えられます。

ライフサイエンス部門

次に、ライフサイエンス部門について説明してみましょう。

採取した血液から、腎臓の機能やコレステロール値なぞを調べていきます。ライフサイエンス部門では、そのための診断機器を提供しています。

また、病気の原因となる細菌を調べる器具をはじめとする様々な診断システムも提供しています。

今後、ヘルスケア産業には、破壊的イノベーションの波が押し寄せていくことが予想されます。前回の記事で説明したiPS細胞です。

iPS細胞を賠償するには特殊な培地が必要です。さらに精度の高い遺伝子検索も必要です。BDXのライフサイエンス部門には、それらの高い技術があります。iPS細胞の進歩によりベクトン・ディキンソン(BDX)の成長は加速されることが予想されます。

侵襲性医療機器

最後に侵襲性医療機器部門について説明してみましょう。

侵襲性医療機器の大半は、買収したC.R. Bardの商品であり、3つの部門に分かれています。それは、
A)血管
B)泌尿器科
C)外科的専門分野
の3領域です。

血管の侵襲性医療機器

Aの血管に対する製品は、大きな血管に影響を及ぼす侵襲の強い機器です。

従来のBDXの注射針や、留置針は看護師も行うことができます。しかし、血管に対処する侵襲性医療機器は医師しか扱うことが許されていません。

1つは、足の動脈が閉塞した場合に風船で拡張し、ステントを入れる医療機器です。

以前、心臓の血管に対するステント挿入について記事にしています(心臓ステントをめぐる興亡その1その2)。心臓の血管が下肢に変わっていると考えればいいでしょう。

2つめは大きな静脈に栄養を送るカテーテルです。

入院して食事をとれなくなったときに、点滴で栄養を送ることが必要です。しかし、普通の点滴で送ると浸透圧が高いためにすぐに血管が潰れてしまいます。そのために、心臓に近い静脈から栄養を流し込むことが必要です。そのためのカテーテルも主力商品の1つです。

泌尿器系の侵襲性医療機器

Bの泌尿器科で主要な機器は、尿道が狭くなったときや意識不明で入院したときに、排尿を確保するチューブです。排尿ができない場合に、老廃物が体内にたまることで血液が酸性に傾いてしまいます。そうなると呼吸を止めてしまうこともあります。また、電解質のカリウムが血液にたまることで、心臓が止まってしまうこともあります。そのような状態に至らないために尿道を確保するのです。

その他の多様な泌尿器系の医療器具も提供しています。

外科系の侵襲性医療機器

Cの外科的な専門分野では、乳がんを採取する特殊な針や、外傷の治療でつかうメッシュ等があります。2つ例を出してみましょう。

まずは、乳がん診断の特殊な針です。

乳がんを正確に診断するために特殊な針で癌細胞を採取して診断することが必要です。その診断により手術を行うかどうかを決定します。そのために実績のある機器であることが不可欠です。当然、製品には高い付加価値があり、強力な価格決定力があるのです。

次に、外傷の治療でつかうシートを紹介しましょう。

外傷の傷は、感染を防ぐためにすぐに縫合しないで露出することもあります。その場合の湿度を保つことが必要です。そのときに特殊なシートをあてて、その上にガーゼで保護します。当然、信頼性のある機材であることが必要です。そのために高い価格決定力が確保されていることは言うまでもありません。

その他の手術で使う付加価値のある多様な機材を扱っています。

成長性

高齢化

BDXは、ヘルスケア領域での医療機器産業において支配的な地位を築いています。ヘルスケア産業は、世界人口の増加や高齢化から、今後さらなる急激に市場が拡大することが明らかです。

その高齢化は、先進国だけではなく、新興国でも拡大することが予想されています。今後、新興国では、厚い中産階級が誕生することが予想されいるのです。

BDXの売上げ比率は、米国内で55%、米国外で45%です。ただし、米国を含む先進国での成長率が5%であるのに対して、新興国では11%の成長率がもたらされています。さらに中国では13%を超える年間成長率に達しているのです。

買収によるシナジー

CareFusionとC. R. Bardの買収により、規模を倍増することに成功しました。規模の拡大によりヘルスケア市場での従来のBDXの商品を提供する機会も大幅に増えています。

さらに、そのようなシナジー効果のほかに、コスト削減にも成功し、年間3億ドルもの経費を減らすことにも成功しました。

ファイナンス

売上、キャッシュフロー、純利益

売上、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフロー、純利益のグラフを見てみましょう。

景気後退期でも売上やキャッシュフローが落ちることなく、持続的に伸びていることが確認できます。

特に2015年と、2018年に急激な売上げの伸びが認められます。それは、2015年にCareFusion、そして2018年にはC. R. Bardを買収したことによります。

配当実績

では、BDXの配当について検討してみましょう。

BDXは安定した配当を株主にもたらし、連続増配の記録は47年にもおよびます。しかも、過去10年での増配率は、平均11.6%にも達するのです。

しかし、直近の配当増はわずか2.74%です。それは、2015年と2018年の買収により有利子負債が増加したことによります。ただし、強力なキャッシュ・フローは依然として債務返済に容易に対応できる状態です。数年ほどあれば財務状態が改善し、10%近い増配率に引き上げられることが可能と考えられます。

現在の配当利回りは1.2%と決して高くはありせん。しかし、10%の増配が復活した場合には、わずか数年で魅力的な利回りに達することになるのです。事実、BDXの配当額は、7年余りで倍増しているのです。

BDXが持続的に10%を超える増配ができる理由は、持続的に安定したしたキャッシュフローによります。 それは、持続的なキャッシュフローをもたらす消耗品販売や保守サービスというビジネスモデルであることに加え、景気後退であっても需要が衰えることのないヘルスケアセクターに属していることに他なりません。

結論

BDXの財務状態は大型買収により一時的には悪化することは明らかです。しかし、買収により一段と強固となった参入障壁と力強いキャッシュフローにより、数年もあれば財務状態は克服されるでしょう。そうなれば、10%の配当成長が復活することは疑いありません。

ただし、市場は、BDXの安定した成長性を織り込んでいることから、プレミア価格で取引されています。しかし、10年以上続いた景気拡大が終息しつつあります。

景気後退期に値下がりするなら、まず購入を検討する企業であることは疑いありません。

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