投資理論・哲学 投資雑談

iPhone完成前にその真価を理解していた天才グロース投資家

投稿日:2018/4/21 更新日:

Apple社を「世界で最も成功を収めたテクノロジー企業」のトップ企業へと押し上げたiPhone。その輝かしい実績から、当時iPhoneがAppleにとって危険な賭けだったことをつい忘れてしまいます。

iPhone発売時に売れ行きを危ぶむアナリスト

しかし、iPhone発表時は、その売れ行きを危ぶむアナリストの意見が大半をしめたのです。もしも、発売時に売れたとしても1年も経てば在庫の山が積み上がることになることは間違いないと。

そもそもApple社は開拓者の立場にある PCにおいてさえ、Microsoftとの競争に敗れ市場シェアの5%を 維持しているにすぎません。

当時ノキア、モトローラで5割以上のシェアを占める携帯端末市場に、いまさら全く実績のないAppleが参入して、成功できる見込みなぞほとんどないと考えても不思議ではありません。パナソニック、NEC、富士通のような技術力とともに実績もある企業ですら1%のシェアを維持しているにすぎない競争の激しい分野なのです。

ジョブズがiPhoneの携帯端末シェアを1%と目標をあげたときアナリストから失笑を買ったのでした。

iPhone発表後に真価を理解した人物

しかし、少数のiPhoneの真価を見抜いた人物もいたのです。

まず、iPhone発表後その真価を理解しApple社の将来を正確に見通した2名を紹介しましょう。

その後のAppleを正確に予想したアナリスト

iPhone発売を2007年6月29日に控えた6月17日のアナリストの意見をあげてみます。

もちろん、iPhoneが圧倒的な成功を収めれば、ジョブズ氏は何ひとつあきらめる必要はない。そしてそうなる可能性は非常に高い。今から2週間待たずにiPhoneは発売され、そのとき、大量消費主義の大混乱はヒステリー状態に達するだろう。ジョブズ氏は再び、文化をとらえる信仰の対象となり、ライバル企業のCEOたちにひどい衝撃を与えるかもしれない。

New York Magazineの記者 John Heilemann

現在からみれば、まるで水晶玉で未来を見通しているかのような意見です。

iPhoneの価値を理解したオバマ前アメリカ大統領

前アメリカ大統領バラクオバマ氏も、iPhone発表後その価値をいち早く見抜いた人物です。

オバマ元大統領は、大統領就任前の上院議員時代に、スティーブ・ジョブズ本人から2007年に発売前の初代iPhoneの実物を簡単に紹介されたのです。オバマ氏はその簡単な紹介後、興奮のあまりこのように言ったのです。

法的にアウトでなければ、ボクはアップルの株をゴッソリと買っておきたいところだね。これはトンでもなく大化けすることになるぞ。

そのエピソードはオバマの選挙参謀を務め、政治戦略を担ったDavid Axelrod氏の回顧録に記載されています。

当時Apple株は14ドルでした。2018年4月の時点でApple株は170ドルを超えています。軽く10倍を超えているのです。オバマ氏が人並み外れた感性の持ち主だからこそ、世に出る前のiPhoneを少し目にしただけで、その後の大成功を予想できたのでしょう。

iPhone完成前に真価を理解し、ジョブズと独占契約を交渉した天才

しかし、世の中にはさらに天才がいるのです。その人物はiPhoneが試作段階であるときからその真価を見抜いていたのです。さらに、まだ試作中であるiPhoneの独占契約を交渉し、さすがのジョブズを驚嘆させたのでした。

日本ボーダフォン買収後の戦略

その人物とは、ソフトバンクCEO 孫正義氏です。

2005年末、日本ボーファーフォン買収の手応えを感じたソフトバンクCEO孫正義は、次の手を考えていました。当時日本ボーダフォンは、au、ドコモに大きく水をあけられ、シェアは20%を切っていました。

おりしも、auやドコモではソニーウォークマンデバイスが人気を博していました。

日本ボーダフォンを引き継ぐソフトバンクが挽回するには、革新的なデバイスがどうしても必要でした。

孫正義の考えはこうでした。当時のスマートフォンのOSは精度が低く、統一された洗練されたOSは存在しない。様々なアプリケーションが動く洗練されたOSで動く携帯電話。その携帯電話にPC用のインターネット閲覧機能とSONYのウォークマンに対抗できる音楽再生機能をつけることができるなら。そんな革新的な携帯電話を販売できれば、NTTドコモやauとの劣勢を挽回することができる。

ジョブズとの面会

しかし、当時それができる人物は1人しかいませんでした。孫正義はその人物に会いにアメリカ飛びます。

孫正義は、Apple社のスティーブ・ジョブズと面会しました。
「電子手帳型のインターネットが閲覧できる携帯電話でiPodが付いているものをつくれば絶対に大ヒットする。」
そう言って、自ら描いたデザインのスケッチをジョブズに渡しました。するとジョブズはおどろいて、
「実は、開発中なんだ。まだ誰にも話してないんだ。君が最初に話題にしてくれた。だから完成すれば君とやろう。」
「日本で独占的販売権がもらえるのなら、こんな素晴らしいことはない。ちゃんと紙に書いて、署名してくれ。」
「何言ってるんだ。署名なんかできないよ。だって君はまだ携帯キャリアすら持っていないじゃないか。」
「もしも、あなたが約束を守ってくれるなら、私も必ず日本のキャリアを買収して来る。」

ソフトバンクが日本ボーダフォン買収

孫正義氏はその約束を果たします。翌年の2006年3月17日ソフトバンクは、英ボーダフォンからボーダフォンの日本法人を買収すると発表しました。

その買収額は1兆7500億円。更に、日本ボーダフォンの2兆4000億円の有利子負債を抱えることになったのです。負担額の総額は4兆円を超えることになります。

当時ソフトバンクの売上は1兆1000円、純利益は1300億円弱。純利益の30倍を超える負債を負うことになる買収に、ソフトバンク株は暴落します。証券会社は軒並みレイティングを大幅に下げていきます。特にゴールドマンサックスは投機的にレイティングするとともに、手持ちのソフトバンク株をすべて売却しました。

iPhone発表

同じ2006年の押し迫った年末に、スティーブ・ジョブズから孫正義に電話がきます。
『すごいものができた。とにかくすごいぞ。パンツにおもらしするぞ。』

年の明けた2007年1月9日、スティーブ・ジョブズの伝説的なプレゼンテーションでiPhoneが発表されたのです。

孫正義氏は後に『初めてiPhoneを手にしたときは鳥肌が立ちました』と述べています。そして、その手のひらに入るような小さなデバイスは、世界を変えると確信したのです。

2007年6月29日は、iPhoneはAT&Tの独占販売でリリースされ、人々を熱狂させていきます。

日本のiPhone販売権

その後日本でもiPhoneの独占販売を巡る交渉が始まります。規格の違うauは足早に脱落しました。

独占販売権の争いはNTTドコモとソフトバンクに絞られました。

2008年5月ごろ、記者と雑談をしていたNTTドコモ関係者は、「iPhone? 間違いなくうちから出ますよ」と自信を隠しませんでした。それは理由の無いことではありません。ドコモ関係者のみならず、アナリストもからも、iPhoneがドコモから販売されることが確実視されていました。

そもそも、米国外でAppleが提携しているキャリアは軒並みその国の最大手です。2008年5月時点で、ドコモのユーザーが約5350万人であるのに対し、ソフトバンクのユーザーは約1880万人。Appleは市場規模の大きさを重視します。ドコモが有利であるのは明白でした。

しかし、2008年6月4日にソフトバンクが重大発表を行います。

この度、ソフトバンクモバイル株式会社は、今年中に日本国内において「iPhone」を発売することにつきまして、アップル社と契約を締結したことを発表いたします。

予想に反して、ソフトバンクがiPhoneの独占販売権を獲得したのです。

当時としては、ソフトバンクが独占契約を勝ち取ったことは、意外であったかもしれません。しかし、最初から勝負はついていたのです。もちろん勝因は孫正義その人です。

その後、ソフトバンクは、iPhoneを奇貨に劣勢を跳ね返し、シェアをあげていくのです。そして、2018年に完済を予定しいてた負債は2011年に前倒しで完済するのです。

実は慎重でリスク志向でない孫正義氏

孫正義氏の日本ボーダフォンはギャンブルだったのでしょうか。その回答はドラッカーの著作にあります。ソフトバンクのボーダフォン買収はギャンブルではなく、リスクを排した慎重に慎重を重ねた判断だったと推測されるのです。

起業家精神をテーマにしたある大学の セミナーで、心理学者たちの発言を聞いたことがある。さまざまな意見がかわされたが、 起業家的な資質がリスク志向であるということでは意見が一致した。ところがまとめの段階で、あるプロセス上のギャップを機会としてイノベーションに成功し、25年で世界的な事業に育てたある有名な起業家がコメントを求められた。

「私は皆さんの発言に戸惑っています。私自身、大勢の起業家やイノベーターを知っているつもりですが、いままで、いわゆる起業家的な人には会ったことがありません。私が知っている成功した人たちの共通点はただ一つ、それはリスクを冒さないということです。彼らはみな、冒してはならないリスクを明らかにし、それを最小限にしようとしています。そうでなければ、成功はおぼつきません。私自身、リスク志向であったならば、不動産や商品取引、あるいは母が希望したように画家になっていたと思います」

『イノベーションと起業家精神』

その点についてドラッカー本人の意見はどうだったでしょうか。

これは私の経験とも一致する。私も成功した起業家やイノベーターを大勢知っているが、彼らの中にリスク志向の人はいない。通俗心理学とハリウッド映画によるイメージは、まるでスーパーマンと円卓の騎士の合成である。実際にイノベーションを行う人たちは、小説の主人公ではない。

イノベーションに成功する者は保守的である。保守的たらざるをえない。彼らはリスク志向ではない「機会志向」である。

『イノベーションと起業家精神』

孫正義氏の高額買収は一見高いリスクを犯しているように見えるかもしれません。しかし、孫正義氏にとっては、機会が訪れたときに、確実でリスクを排した判断を積み重ねたにすぎません。

類い稀な天才である孫正義だからこそ、一般人では感じることのできない機会を感じ取り、一般人では予見できない未来を見通し、通常ではギャンブルにしかみえない判断をすることができるのでしょう。一般人には無謀にしかみえないその判断は、孫正義にとっては、実は未来に適合したリスクの少ない選択であったに違いありません。

私がバリュー投資とインデックス投資に拘る理由

グロース株投資では、短期間で資産を劇的に増やすことができます。しかし、グロース投資にはその時代を見通す天賦の才能が必要です。ソフトバンク社の孫正義のような天才にふさわしい投資方法なのです。

他方、バリュー投資やインデックス投資には天賦の才能は必要ありません。必要なのは愚直なほどの忍耐力です。私がインデックス投資とバリュー投資に拘るのは、自ら才能がないことを自負しているからにほかなりません。

自らを天才として考える投資家はグロース投資に挑戦してもいいでしょう。特に若い投資家は挑戦する価値は十分あります。

しかし、その場合も半分はインデックス投資を行うことを推奨します。自らを天才と考えてもほとんどの場合は失敗に終わることがほとんどです。それは、明らかに天才である甲子園優勝投手のほとんどがプロで芽が出ないのと同様です。たとえ失敗してもその経験という資産が残ります。その経験を生かすときに、インデックスに投資していた金融資産はきっと役に立つことでしょう。

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