前回、インターネット業界で、王者Yahoo!は新たに台頭したGoogleにその盟主の座を譲るところまでを記載しました。
IT業界の主戦場もスマホの時代となり、AppleとGoogleが新たな覇者となってのです。
逆にYahoo!は衰退の一途をたどっていくことになります。
目次
新興勢力Facebook
Google以外にも、新たな新興勢力が台頭しました。Facebookです。
Facebookでは個人的なネットワークを通じて情報を集めることができます。もしも、そのネットワークが普及すれば、検索エンジンの必要性は大幅に低下します。
しかも、Facebookのビジネスモデルは、Googleのように開いたプラットフォームとは整合しません。むろし、Yahoo!のような閉じたプラットフォームとに調和するのです。
Facebook買収交渉
Yahoo!のセメルCEOはFacebookに目をつけました。そうして、2006年7月に買収に乗り出していくのです。
当時Facebookはまだ大学生用のソーシャルネットワークに過ぎません。しかし全世界に解放すればインターネットの世界で最も価値のある存在になることは明らかです。
当時Yahoo!の取締役会は12億ドルの買収額を承認していました。『あまりに厳しい額を提示するならば交渉は決裂する。とにかく交渉を成立させることが先決だ』と判断したのです。
買収交渉が始まりました。
セメルが面会したとき、FacebookCEOザッカーバーグは若干22歳でした。セメルはザッカバーグを手なずけることができると確信したのです。そうして、8億5000万ドルの買収額を提示します。
しかし、交渉は決裂しました。
本社に戻ったザッカバーグは、ガッツポーズをして喜びます。
そもそも、ザッカーバーグはFacebook売却には前向きではなかったのです。しかし、出資者の圧力から、Yahoo!が10億を提示すれば買収に応じることが取締役会で決定されていたのでした。
買収額が10億ドルを下回り、Facebookを手放す必要がなくなったのです。
Yahoo!のFacebook買収は幻に終わりました。
CEO交代
Yahoo!セメルCEOは、かつてのハリウッド映画のバイヤーさながらに、苦境に陥ったコンテンツを安く買いたたいては、それで収益を上げる手法を踏襲していました。
しかし、苦境に陥ったITコンテンツは、衰退しかありありません。一方、有力なITサービスには、プレミアを払ってでも買収することが不可欠なのです。
Yahoo!は、次第に負け組コンテンツのカオスに陥り、業績も悪化の一途をたどっていきます。
2007年、ついにセメルはYahoo!CEOを辞します。後任には、創業者のヤンが着きました。
Microsoft
Microsoftの買収オファー
ヤンが復帰して半年の2008年1月31日、Yahoo!が復活する最大の機会が訪れます。
MicrosoftのバルマーCEOからYahoo!買収のオファーが来たのです。
買収額は450億ドル、1株31ドルです。当時のYahooの市場価格は、1株19ドルに過ぎません。Microsoftの提示額は、その60%を超える信じられない額でした。
バルマーは、Googleに対抗するためにはYahoo!とMicrosoftが1つになることが必要であると考えていました。ITの戦場がパソコンからモバイルに移行し、MicrosoftはGoogleに大きく水をあけらていました。Microsoftはその資金力で、なりふり構わずGoogle打倒を決断したのです。
決裂
ネットバブルの時代には1280億ドルにも到達したYahoo!の時価総額も当時は300億ドルも切っていました。多くの幹部は、買収に賛成します。
しかし、ヤンはかつてのネットバブル時代の栄光に未だ引きずっていたのです。MicrosoftなしでもYahoo!は復活できると夢想を描きます。
2月11日、Yahoo!はMicrosoftのオファーを拒否します。
交渉は難航します。
5月2日に、バルマーCEOは、再度1株33ドルでオファーをします。対して、Yahoo!CEOヤンは、Yahoo!の価値が低すぎるとして37ドルを提示しました。
ついに、バルマーは手を引きます。
MicrosoftのYahoo!買収は幻に終わりました。Yahoo!復活の最後のチャンスが消滅したのです。
交渉決裂を受けて株価は急落します。
Yahoo!の終焉
Yahoo!衰退
その後、Yahoo!は転落の一途をたどっていきます。
小さなスマートフォンの画面では、Yahoo!のサイトは迷路のように混乱を極めます。ショッピング、天気予防、ゲーム。Yahoo!には、何でもあるけど、必要なものは何も無い。かってのダイエーのような品揃えとなっていったのです。
ユーザーは、Yahoo!から急激に離れていきます。
一方、Googleは、検索エンジンのみならず、YouTube、Google Mapを、スマホ時代に最適化していました。しかもOSのAndroidも押さえているのです。
さらに、検索エンジンには、キーワードの予想変換機能も加えられていきます。Googleは、検索エンジンの市場で完全な支配体制を確立しました。
もはやYahoo!には凋落を押しとどめるすべはありません。2008年の末には創業者ヤンがCEOを辞任することになります。
その後も、多くの経営者がCEOに招かれるものの、復活を遂げることなく解任されていきます。
Yahoo!解体
2016年7月、ついに終焉の時期を迎えます。
携帯キャリア大手ベライゾン(VZ)は、Yahoo!の中核事業を約44億3千万ドルで買収します。それは、8年前にMicrosoftが提示した10分の1にも満たない額だったのです。
Yahoo!は社名を『アルタバ』に代え、中国のアリババやYahoo!Japanの株式などを管理する投資会社となります。
ネットバブル時代に、無敵を誇ったポータルサイトの草分け的存在Yahoo!。しかし、創業から23年あまりで事実上その歴史に幕を閉じることになったのです。
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