前回、Yahoo!によるGoogle買収が失敗に終わるまでを記しました。
目次
莫大な富の鍵を解き明かしたGoogle
検索連動型広告
Yahoo!はGoogleとの検索エンジン契約を打ち切ります。
Googleは収入源が断たれ危機に陥ることになりました。しかしそのとき、ついに検索エンジンを莫大な富にかえる鍵を解き明かすことになったのです。
それこそ、検索連動型広告に他なりません。
検索エンジンでキーワードを入力すると、結果が提示されます。同時に、キーワードに連動した広告も提示されるのです。ユーザーがキーワードを入力することは、それに興味があるに他なりません。ユーザーに興味のある事柄の広告が出されることで、絶大な宣伝効果がもたらされるのです。
検索連動型広告の優位性について、以前ブログ記事にしています。
-
-
【広告主から見るGoogle暴落】ビジネスモデル劣化による急成長
4月30日に、決算発表を受けてGoogleが暴落しました。 売上が前年比17%増と成長が鈍化したとのことです。 バリュー投資家の立場からみれは、17%も成長しているなら素晴らしいというほ ...
Googleの収益は急速に拡大し、Yahoo!を抜き去って行きます。
Netscapeの二の舞
しかし、さらに強力な敵が待ち構えていたのでした。Microsoftです。
検索連動型広告が莫大な富を生み出すことをMicrosoftに嗅ぎつけられるなら、新興企業のGoogleなぞひとたまりもありません。
かつてニューエコノミーの旗手Netscapeは、Microsoftに完膚なきまでに打ちのめされました。
1995年、MicrosoftはWindows95の開発に忙殺されるあまり、インターネットの価値を理解していなかったのです。しかし、Netscape上場による市場の熱狂的な反応をみて、インターネットの重要性に気がつくのです。
そうしてInternet Explorerの抱き合わせ販売によりNetscapeを壊滅に追い込みます。
GoogleはNetscapeの二の舞を防ぐため、高収益をひた隠しにして株式公開を少しでも遅らせることにしました。
いつしか、検索エンジンはMicrosoftが追いつくことができない高地に到達します。
スマホ時代の覇者へ飛躍
株式公開
2004年8月、ついにGoogleは株式公開を行い、初日で時価総額は230億ドルに達しました。
その後、株式公開で得た資金で、次々と企業を買収していきます。
2004年10月27日に、キーホール社を買収しました。人工衛星や航空撮影データベース技術は、後にGoogle Mapとして結実します。
2006年10月9日にはYouTubeを16億5000万ドル(約1950億円)で買収します。
Android社
しかし、もっとも重要な買収は、2005年8月のAndroid社買収です。しかも、その買収額は5000万ドル(55億円)に過ぎなかったのです。
Android社は、アンディ・ルービンによって2003年10月に設立されました。
当時、ビル・ゲイツも、スマホ時代の到来を予測し、OS『パワードスマートフォン2002』を世に送り出していました。しかし、高いライセンス料が警戒され、普及には至りません。
ルービンはMicrosoftの隙を突き、OSを「無料」にして一気にシェアを確保することを考えます。OSを無料にするかわりに、アプリ販売や定額制クラウドサービスなどで稼げると踏んだのです。
そうして、たった8人でスマートフォンOSを開発し、世界中の携帯端末メーカーに売りこみました。
しかし、世界中のどのメーカーにも相手にされません。
サムスン社でのプレゼンでは、役員に言い放たれます。『我が社では、2000人がモバイルOSの開発にあたっている。あなた方はたった8人ですか。』どっと嘲笑が会議室に起こります。
ルービンは屈辱に耐えるほかありません。さらに、資金も尽き、廃業の二文字が現実性を帯びてくるのです。
その時、Google創業者のペイジと出会います。ペイジはGoogleがAndroid社を買収することを提案します。開発資金は心配しなくていい。好きなように開発してくれればいい。
ルービンは、Googleとともに歩む決断をしました。GoogleのもとでAndroidOS開発は急速に進められていきます。
ソフトバンク孫正義の巨額買収
同じ年の2005年末、東京でも巨大買収が進められていました。
ソフトバンク孫正義による日本ボーダフォン買収です。
買収額1兆7500億円。さらに、2兆4000億円にものぼる負債も引き受け、総額は4兆円を越えました。
対するソフトバンクの純利益は1300億円弱。当時、沈みゆく船といわれた日本ボーダフォンへ巨額投資に、幹部は声を失います。
孫正義の秘策
しかし、孫正義には秘策があったのです。
アメリカ飛び、Appleのスティーブ・ジョブズと面会します。『インターネットが閲覧できる電子手帳型の携帯電話でiPodが付いているものをつくれば絶対に大ヒットする』
最初、隠し通そうとしていたジョブズも、ついに打ち明けます。『実は、開発中なんだ。まだ誰にも話してないんだ。君が最初に話題にしてくれた。だから君とやろう』
翌年の2006年3月17日ソフトバンクは、日本ボーダフォン買収を発表しました。
ソフトバンク株は、投機的にレイティングされ暴落します。株式市場は、ソフトバンク倒産秒読みと判断したのです。
同じ2006年の押し迫った年末に、スティーブ・ジョブズから孫正義に電話が届きます。『すごいものができた。とにかくすごいぞ。パンツにおもらしするぞ。』
-
-
iPhone完成前にその真価を理解していた天才グロース投資家
Apple社を「世界で最も成功を収めたテクノロジー企業」のトップ企業へと押し上げたiPhone。その輝かしい実績から、当時iPhoneがAppleにとって危険な賭けだったことをつい忘れてしまいます。 ...
iPhone発表
2007年1月、Android完成の大詰めを迎えたルービンは、安堵に浸りタクシーで移動していました。
しかし、そのとき衝撃的なニュースを耳にします。ジョブズによるiPhone発表です。
ルービンは、思わずタクシーを路肩に停めさせました。『大変だ、俺たちの電話が発表できなくなるぞ。』
洗練されたiPhoneに比べれば、試作品のAndroidは90年代のような代物だったのです。『もう一度Androidを作り直さなければならない。』
iPhoneとAndroidの発売
半年後の2007年6月にはAT&TからiPhoneが発売されました。
さらに1年後の2008年7月には日本でもソフトバンクがiPhone独占販売を開始します。その後、急速にdocomo、auを追い上げていくのです。
2ヶ月後の2008年9月、ついにアメリカでAndroid機も発売されました。iPhone発売から1年余りの遅れで完成に漕ぎ着けたのです。
ITの主戦場は、パソコンからスマホと移っていきます。覇権もMicrosoftの一極体制から、AppleとGoogleの2強時代へと進んでいきます。
一方、Yahoo!は衰退の一途をたどっていくのです。
応援クリックして頂けると励みになります