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ダナハー(DHR)【急成長のグローバル医療器機企業】

投稿日:2019/11/2 更新日:

今回は、急成長を遂げている医療機器企業ダナハー(DHR)を紹介していきます。ヘルスケアというディフェンシブ株でありながら、急激に業績を上げているグロース株でもある極めて魅力的な投資先です。

しかし、その事業内容についての理解は容易ではありません。今回は、その理解を深めることに主眼をおいた記事としました。

ダナハー(DHR)の概要

沿革

ダナハー(DHR)は、1969年スティーブ・レイルズとミッチェル・レイルズによりマサチューセッツ州の不動産投資会社として設立されました。

しかし1984年に、不動産事業から製造業者の買収を軸とした経営へと舵をきり、社名も現在のダナハー(DHR)に変更されました。

その後、400社以上の買収を繰り返すとともに、選択と集中も進めていきます。

2016年には工業機械部門をフォーティブ(FTV)としてスピンオフとし、ヘルスケア領域の大きく軸足を移しました。

2018年7月、歯科部門をスピンオフすることを発表します。

さらに2019年2月には、GEライフサイエンスを214億ドル(約2兆3700億円)で買収に合意しました。

規模

現在、ダナハー(DHR)は従業員は70,000人を超え、世界100か国以上で事業を展開する世界的なグローバルヘルスケア企業となっています。

売上高は2018年には約200億ドルにも及び、時価総額は978億ドル(日本円にして約10兆円)にも達しました。

地理的な分布

ダナハーの売上について地理的分布を見てみましょう。

北アメリカ   35%
西ヨーロッパ  29%
その他の先進国   9%
新興国     27%

非常にバランスが取れていることがわかります。

事業セグメント

次に、事業セクターの売上比率を見てみましょう。データは2018年です。

①診断      :62億ドル
②ライフサイエンス:65億ドル
③環境・応用工学 :43億ドル
④歯科      :28億ドル

複雑なダナハーの事業内容を理解するためには、診断セクターについての知識を深めることが必要です。まず、そのセクターから説明していきましょう。

診断セクター

診断セクターの内訳

まず、診断セクターについてのダナハーのプレゼン資料を添付してみましょう。

診断セクターがより細分化されて記載されています。その一つ一つの理解を深めながら、それぞれの相互関係をみていくことで理解が深まると思われます。

acute(緊急)

acute(緊急)部門では、救急医療での器機を扱っています。

まず、生きるために状態でもっとも欠かすことのできないものは何でしょうか。

答えは『酸素』です。そのためには、体内に酸素が行き渡っているかを確認する必要があります。その器機が、動脈ガス分析器です。動脈から血液を採取し酸素や二酸化炭素を計測するのです。

血液ガス分析器は、1954年にデンマークのラジオメーター社により開発されました。その後2005年にダナハーに買収され、その傘下となっています。

競合は、独シーメンスです。

Pathology(病理検査)とImmuno-assy(免役同定)

次にPathology(病理検査)とImmuno-assy(免役同定)について説明していきましょう。その2つを対にすることで理解が深まります。

まず、体の一部を採取して顕微鏡でみるのが病理検査です。それにより、癌をはじめとする病気を診断することができるのです。

その部門を強化するため、ダナハーは、2005年に世界的カメラブランドLeica(ライカ)から顕微鏡部門を買収しました。

参考に『国立循環器研究センター病院』のサイトにある病理組織の写真を引用してみましょう。

次に、免疫同定検査について説明していきます。

病気が特殊な物質によって引き起こされることもあります。しかし、顕微鏡で見るだけは、その物資の有無はわかりません。そのため、物質に付着する免疫抗体に蛍光物質をつけて確認していきます。百聞は一見にしかず。同病院での顕微鏡写真を添付してみましょう。

蛍光反応で光っていることから、病気の原因となる物質を確認できます。

競合企業は、アボット(ABT)ベクトンディッキンソン(BDX)です。

Hem(血液検査)&Urinalysis(尿検査)

Urinalysis(尿検査)は、尿のタンパク質や糖を計測する検査です。

Hemは、Hematology(血液検査)を意味します。血液には、白血球や赤血球の細胞成分と、その他の液体成分のわけることができます。

血液検査では、細胞成分の白血球や赤血球の数を計測します。

白血球が多いなら、肺炎や胆嚢炎のような強い炎症を疑います。また、赤血球が少ないなら貧血を意味し、癌の存在を疑います。

尿検査や血液検査でのトップシェアは、日本のシスメックスで、世界シェアの半分を占めています。ダナハーは2位につけています。

Clinical Chemistry(生化学検査)

Clinical Chemistry(生化学検査)は、白血球や赤血球の細胞成分を除いた血液の液体成分の検査です。そこで、血糖やコレステロールを計測して、糖尿病や高脂血症の診断をしていきます。

2011年、ダナハーは、生化学検査のリーディングカンパニーであるBeckman Coulter(ベックマン・コールター)を68億ドルで買収しました。

競合企業は、ここでもアボット(ABT)ベクトンディッキンソン(BDX)です。

Molecular(分子生物学)

Molecular(分子生物学)とは、遺伝子を扱う分野です。

遺伝子による診断では、肝炎ウイルス検査がよく知られています。

不治の病であったC型肝炎が、ギリアド・サイエンシス(GILD)による画期的な内服薬により完治できるようになったことは記憶に新しいことでしょう。

その完治について、血液中にある微量C型肝炎ウイルス遺伝子を計測して診断します。微量のために普通では計測できません。そのため、血液中のあらゆる遺伝子をネズミ算的に増幅させて、存在を確認します。もしも、ゼロならいつまでたってもゼロのままです。しかし、微量でもあれば、倍々ゲームである程度の計測できる量となります。その検査をPCR法といい、開発者は1993年にノーベル医学生理学賞にも輝きました。

2016年、ダナハーは、リアルタイムPCR器機メーカー大手の米国のCepheid(セフィエド)を買収しました。

競合は、アボット(ABT)、サーモフィッシャー(TMO)であり、3社の寡占市場となっています。

市場でのダナハー地位

ダナハーは、かつてのWindowsのような独占市場を保有しているわけではありません。しかし、少数企業が支配する寡占市場で大きな存在感を見せています。それは、かつて史上最強企業といわれたGEを率いたウェルチ会長が好んだ市場に他なりません。

改めて、ダナハーがグローバルの検査市場でいかに強力な地位を占めているか確認してみましょう。2017年の世界ランキング7位までを挙げてみます。

順位 企業名 売上高(100万ドル)
1 ロシェ スイス 10281
2 アボット(ABT) アメリカ 7302
3 ダナハー(DHR) アメリカ 5840
4 シーメンス ドイツ 4591
5 サーモフィッシャー(TMO) アメリカ 3486
6 ベクトンディッキンソン(BDX) アメリカ 2849
7 シスメックス 日本 2543

ライフサイエンス

診断セクターとの関係

ライフサイエンスセクターは、65億ドルとダナハーで最大の売上を誇ります。さらに、診断セクターと極めて近い関係にもあります。

大きな違いは、顧客が研究機関や製薬会社であることです。

製薬会社

製薬会社は、創薬が目的です。

現在、創薬は低分子薬からバイオ製剤へ大きく軸足が移り、遺伝子工学の存在が高まっています。遺伝子技術により、大腸菌や酵母菌に、バイオ薬の遺伝子コードを植え込み増殖させることでバイオ薬を製造していくのです。

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研究機関

研究機関でも遺伝子工学による研究が主流となっています。

再生医療の中核となるiSP細胞も4つの再生遺伝子コードを植えこむことで作成されます。また、遺伝子コードの入れ替えにより、遺伝病の治療や、癌の増殖を防ぐことも研究されています。

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GEライフサイエンスの買収

ダナハーは、そのセクターを強化するために、GEライフサイエンスの買収に合意しました。

GEライフサイエンスは、遺伝子工学の強力なプロバイダーであり、買収によりダナハーはその領域のトップに躍り出ることになります。

環境・応用工学

環境・応用工学セクターの売上高は43億ドルです。

そのセクターは大きく水環境とプロダクトIDの2つに分けることができます。

水環境

水環境については、水質の分析や、ろ過による水処理です。その技術は、ライフサイエンスや診断と近く、シナジー効果が期待できます。

プロダクトID

プロダクトID部門では、コカコーラ社製品のID管理や、製薬会社の製品のパッケージ化を請け負っています。

技術そのものは、ライフサイエンスや診断とは関係ないかもしれません。しかし、極めて重要な取引先が顧客となっています。そもそも、製薬会社はライフサイエンス部門の重要な顧客です。また、コカコーラ社も健康に留意した製品開発を進めているため今後の提携が期待されます。

さらに、そのような優良顧客を抱えることから信用と安定したキャッシュフローがもたらされています。

歯科

歯科セクターの、売上高は28億ドルです。

かつてダナハーの主要セクターであったものの、最近では成長鈍化に陥っています。それは、他の部門とのシナジー効果が薄いことが考えられます。

そのため、2018年にスピンオフが発表されました。

ダナハーの買収戦略

元GEウェルチ会長との類似性

ダナハーの競争優位性はまずその買収戦略にあります。それはトヨタ自動車の『カイゼン』をもとに開発されたDBS(ダナハー・ビジネス・システム)という戦略です。競争優位性を持つものの経営がうまくいっていない企業を買収し、リストラとコスト削減で利益体質に代えていくのです。

ここまで聞いて、ある伝説的な経営者が思い浮かばないでしょうか。

かつてのGEの名経営者ウェルチ会長です。市場でナンバーワンかナンバーツー以外の部門はことごとく売却し、大規模な企業買収を繰り返し、GEを史上最強企業と言われるまでに成長させていきました。

ウェルチ会長との違い

一方、ウェルチ会長の戦略と大きく異なることもあります。それは、ダナハーが規模ではなく株主リターンに重点を置いていることです。

多くの経営者は規模の拡大を重視します。GEウェルチ会長も時価総額1位に強いこだわりを持っていました。

しかし、それは無秩序な買収を引き起こすことにもなります。

ウェルチ時代、GEは金融機関から放送局までの様々な買収を行い、ひたすら規模の拡大を進めてきました。放送局NBC放送を買収したことから、ユニバーサルスタジオもGE傘下だったのです。

しかし、最終的にはGEの利益の40%を稼ぎ出していた金融部門が仇となり、解体に至りました。

株主リターン

一方、ダナハーは規模の拡大ではなく投資家リターン拡大を重視しています。その1つが、スピンオフです。

歯科セグメントを例に挙げるなら、その売上は全体の14%に過ぎません。企業のトップマネジメントとしては、他のシナジー効果も薄い歯科部門に経営資源を投入することはできません。

しかし、スピンオフによって、CEOが歯科部門の細部にまで眼を光らすことができます。さらに、他社からの買収提案も受けやすくなるのです。買収はプレミアのついた額が提示されることが多く、株主リターンの向上には極めて有利です。

ファイナンス

売上高

売上、キャッシュフロー、純利益のグラフを見てみましょう。

売上高が順調に成長していることがうかがえます。2016年の売上げ低下は、工業機器のスピンオフのためで懸念材料ではありません。

今回も売上28億の歯科セクターがスピンオフに予定されています。しかし、GEから売上高30億ドルのライフサイエンス部門の買収が合意されました。今回はスピンオフにより売上高の低下が起きることにはなりません。

キャッシュフロー

キャッシュフローを観てみましょう。

売上高および営業キャッシュフロー比率は20%を超えています。そこから、強い参入障壁による強い価格決定力が推測されます。

配当

配当は0.49%と極めて低く、インカム目的での投資には適しません。しかし、強い成長から確実な増配が期待できます。

結論

現在、PER40と高値圏に達しているため、直近での投資は推奨できません。

しかし、大統領選では医療費高騰が争点の一つとなりヘルスケアセクター全体の株価下落が予想されます。その際に、つられてダナハーが安値になれば、投資を検討する余地は十分にあると思われます。

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