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シーゲル博士による第2位黄金銘柄【世界的ヘルスケア企業アボットラボラトリー(ABT)】

投稿日:2018/7/14 更新日:

一般には、日本人のとってアボットラボラトリー(ABT)という企業名にはなじみがないかもしれません。しかし、多くの米国株の投資家にとっては、なじみなる企業であることは疑いありません。

今回ABTを紹介し、その投資について検討していきます。

世界的ヘルスケア企業 アボットラボラトリー(ABT)

シーゲル博士による第二位の黄金銘柄

多くの米国株投資家の間で、ABTは極めて著名な企業の1つです。その理由の1つは、ABTがヘルスケア領域の世界的なグローバル企業であることであることは疑いありません。

しかしそれ以上に、シーゲル博士のバリュー投資研究で50年のリターンが第2位という卓越した結果を出したことが最大の理由です。シーゲル博士による永続性のある企業として、もっとも高いリターンはフィリップ・モリス社の年間平均19.75%でした。そのフィリップモリス社についで2位がABTの16.51%だったのです。

ABTの永続性は、その連続増配記録にも現れています。連続増配記録は46年にも及ぶのです。

ABTの沿革

ABTは1888年にイリノイ州シカゴの開業医ウォレス・アボットがハーブを含んだ顆粒剤の販売を開始したことからはじまります。その後、130年以上にわたり確実に発展を遂げ、現在は世界150カ国以上に展開するグローバルヘルスケア企業となっているのです。その時価総額は2018年7月14日時点において1106億ドルにも及びます。

ABTは、その130年にもわたる沿革において、さまざまに変化を遂げてきました。最近の大きな変革は、バイオ医薬品部門をアッヴィ(ABBV)としてスピンオフしたことです。

その他にも、セント・ジュード・メディカルの買収、眼科医療事業の売却、診断薬Alereの53億ドルでの買収があります。それぞれの買収や売却の背景は、後のセグメントの解説時に説明していきます。

事業のセグメント

では、そのセグメントについて説明していきましょう。

ABTのセグメントは、4つの主要事業に分かれています。
①栄養製品
②ジェネリック医薬品
③診断薬
④医療機器
の4つです。

栄養製品

栄養製品のセグメントは、小児用と、大人用に分かれています。

小児栄養製品については、米国をはじめとするいくつかの地域で第1位のシェアを保っています。そもそも、小児用栄養剤の世界市場は、ダノン(フランス)、ネスレ(スイス)、レキッドベンキーザー(イギリス)、アボットの4社の寡占体制が形成されています。

小児用の粉ミルクの品質には消費者は敏感であり、プライベートブランドへの耐性は極めて強いといえるでしょう。

中国市場でも4社の寡占状態が進んでおり、最近でも日本の明治が中国の粉ミルク市場から撤退しています。中国以外の人口増加の高い新興国でも4社の寡占市場が形成されつつあります。

大人用の栄養補助食品は、固形物を飲み込むことができない高齢者でも摂取できように調合させた食品です。飲み込むだけでなく、胃にチューブを通してそこから栄養補助食品を流し込むこともあります。

高齢化で需要が拡大することは明らかです。

さらに、消費者が直接購入するというよりも、医療機関への販売となっています。法人への販売のために、一般消費者への販売よりも安定した需要があります。

そのような底堅い市場から、2011年以降、毎年にわたり営業利益率が向上しています。

ジェネリック医薬品

ジェネリック医薬品セグメントは、新興市場に全面的に注力しています。先進国のジェネリック医薬品部門は2014年にマイランに売却しています。

診断薬

診断薬セグメントは、ブランドジェネリック医薬品セグメントよりも地理的に多様化しています。売上の約30%は米国で発生し、30%は米国以外の先進国市場で発生し、40%は新興市場で発生しています。

診断薬部門の強化のために、Alereを53億ドルで買収しています。

診断部門は過去数年間で大幅な営業利益率改善を達成しました。

診断薬の参入障壁

診断薬については、極めて強い参入障壁があります。

ABTは、糖尿病の指標であるHbA1Cの検査デバイスを販売しています。糖尿病の専門医はHbA1Cの推移により病態の推移を判断します。1回の値で評価するのではなく、年間を通しての推移で評価するのです。しかし、そのHbA1C値は製造企業により微妙に値が異なります。そのために、メーカーを変えることで病態の評価ができなくなるのです。

また、病理染色液により癌かどうでないかを判断することもあります。製造企業によってその液も微妙に異なります。その微妙な差により癌かそうでないかの診断が異なることもあるのです。

医療の質を落としてまで診断薬を変える利点はどこにもありません。診断薬には、そのような極めて高いスイッチィングコストがあり、高い参入障壁を形成しているのです。

医療機器

アボットラボラトリーズの最後の部門は医療機器部門です。

売上高が100億ドルを超える医療機器は、ABTにとって最大の(38%)部門です。

医療機器部門は、心臓血管領域と糖尿病領域に選択と集中を行っています。その選択と集中の一環として、眼科医療事業を4.33億ドルでジョンソン・エンド・ジョンソンに売却しています。

集中部門の1つである糖尿病部門では対象となる糖尿病患者は世界中で4億2500万人にものぼり、さらに患者数は増加しています。

その糖尿病部門で、ABTは革新的な機器が開発に成功しました。それは「Freestyle Libre」という血糖監視システムです。

従来は血糖測定には、極細の針を刺して血糖を自己測定することが必要でした。しかし、「Freestyle Libre」は針を刺さないで血糖を測定する画期的なデバイスです。今後2045年までにさらに48%増加すると見込まれています。

心臓血管部門の医療機器

もう1つの重点領域は、心臓血管部門の医療機器セグメントです。

ABTは、2016年にセント・ジュード・メディカルを250億ドルで買収し、2017年年明けに手続きを完了しました。

この買収により、医療機器部門の2018年第一四半期の売上高はほぼ倍増しています。

2016年、ABTの医療機器部門での成長率は4.5%でした。2017年にセント・ジュード・メディカルを完全に統合した後は、2018年第一四半期の医療機器部門での成長率についても、9.4%と倍増しています。

もともと、ABTは、心臓の血管である冠動脈を広げる金属ステントでのシェアが世界でトップを確保していました。

冠動脈とは、心臓そのものに酸素や栄養を送る血管です。その血管が動脈硬化で細くなり、血流が障害されることで、狭心症や心筋梗塞が発症するのです。その細くなった血管を拡張し、金属のステントで固定することで、血流の流れが障害されないようにすることで、狭心症や心筋梗塞の発症を防ぐのです。

ABTはその冠動脈ステントで世界トップシェアを確保していたものの、冠動脈ステント以外では、存在感のある心臓血管系の医療機器がありませんでした。

逆にセント・ジュード・メディカルは冠動脈ステントでは実績がないものの、不整脈の治療機器や、心不全の際の心機能補助機器等の新血管系の多様な医療機器を保有していました。

狭心症や心筋梗塞では、不整脈や心不全が高い頻度で出現します。ABTはセント・ジュード・メディカルの買収により、心血管系のデバイスをほぼ網羅するようになったのです。

それは、営業マンにとって弾力的な販売が可能となります。例えば、不整脈治療機器の販売の際に、冠動脈ステントの新製品も無償配布して、次の購入につなげるような販売戦略をとることもできるのです。

メドトロニック(MDT)は、心臓血管系の医療機器デバイスをほぼ網羅していました。それにより、不整脈機器や心不全補助機器の販売の際に、冠動脈ステントも無償配布し、ABTのシェアを少しづつ切り崩してきたのでした。

しかし、ABTはセント・ジュード・メディカルの買収により、守りの営業から攻めの営業へと転じることができるようになったのです。

ABTのセント・ジュード・メディカル買収により、心臓血管部門でMDTと完全に対抗できる企業が誕生したことになったのです。

心血管医療機器の参入障壁

もともと医療機器そのものの参入障壁は非常に高く、新規参入はほぼ不可能でした。その中でも心臓血管系の医療機器の参入障壁は極めて高く、少数企業の寡占市場を形成しています。それは、もともと冠動脈は3mm大しかありません。さらに治療が必要となった狭心症や心筋梗塞の冠動脈は1mm以下となっているのです。そこにレントゲンでの2次元の画像から、はわらかいガイドワイヤーを挿入し、細い箇所を拡張させステントを挿入するのです。このようにカテーテル治療の専門医は極めて微細な操作を行うことが必要とされるのです。

また、不整脈治療の専門医にも、微細な操作が必要とされます。心房の壁は2mm程度の厚さしかありません。その心房から、不整脈を起こしている心臓の壁を見つけ出し、電気焼却することで不整脈の出現を抑制するのです。

電気の出力が弱いと不整脈を起こしている箇所が残ってしまいます。出力が強すぎると心臓壁が破れ出血多量で死亡となります。レントゲン透視下の2次元の映像から、心臓の立体を頭に描いて操作を進めていくのです。

そのような微細な操作を行う場合には、医師は使い慣れた機器を使いつづけます。最初の機器の選択も上司が使っている機器を使って熟練していきます。

そのために、新血管系の医療機器は、特許が切れても他社が新規参入することは非常に困難です。そのことからも、ABTの医療機器部門には、極めて高い参入障壁があることが理解できると思われます。

ABTが今後拡大する要因

高齢化

第1は、世界人口の高齢化です。 2015年に65歳を超える世界人口の割合は8.5%でした。この割合は、今後35年間で倍増し、2050年には16.7%になると予想されています。

新興国での拡大

さらに、アボットラボラトリーズに利益を拡大させる第2の背景は、新興市場にも焦点を当てていることです。その焦点は、先ずはジェネリック医薬品セグメントが当てはまります。

さらに、新興国での中産階級の誕生から糖尿病や心臓病も爆発的に増加することは疑いありません。

現在、新興国の多くは、GDP全体のうち医療費に占める割合はごくわずかです。しかし、今後爆発的に増加すると見込まれています。

高齢化した国内人口と新興市場国の医療費支出の増加に焦点を当てていることから、ABTには膨大な成長余地が残っていると判断できます。

ファイナンス

では、その実績として、10年の売上、キャッシュフロー、純利益を見てみましょう。

2011年からの売上高減少は、アッヴィ(ABBV)のスピンオフによるものです。

スピンオフ後も着実に売上高が上昇し、キャッシュフローも安定していることが確認できます。

しかし、ここには載せていないもののバランスシートでは、債務が上昇しています。それはセント・ジュード・メディカルやAlereの買収によるものです。ガイダンスでは、その債務水準の引き下げが表明されました。具体的には、「すでに2018年1月に40億ドルの債務を返済し、2018年にかけて追加の債務返済を見込んでいます」と表明されています。

結論

巨額買収による莫大な債務がキャッシュフローの悪化を招くことは疑いありません。そのために、しばらく株価は停滞することが懸念されています。しかし、株価が停滞したとしても、安定したキャッシュフローにより債務が一段落した後は、急激な株価の上昇が起こりうると推測されます。

ただし、ABTのその安定したビジネスモデルにより、現在の債務が遅くない期間で克服されることは、市場も認識しています。だからこそ、現在のABTの過去10年間の平均株価収益率である16.2をも上回るプレミア価格で取引されています。現時点はABT購入するのに最適な時期ではないかもしれません。

しかし、不況耐性が強く、参入障壁の高いブルーチップであるABTについては、ある程度プレミア価格を支払ったとしても、長期リターンは依然として満足できるものと予想されます。

債務で上値が抑えられているときこそが配当再投資のチャンスかもしれません。ある程度安くなった場合に、少しずつ買い増しすることを考えてもいいかもしれません。安くなりすぎることを待っても、その時が来るかどうかは分からないのです。

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